DSC EXPRESS
Vol.053

DSC EXPRESS Vol.053をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。

  • 参照;青山通り3丁目付近の道路空間風景。バス停ボックスには利用者が途絶えることがない。

    道路空間にもっと!デジタルサイネージ

    日本では道路空間における動画広告は原則的に認められていない。景観やデザインよりも交通安全上の理由からだが、はたして現状のままで良いのか。バス停や町内会の掲示板などは真っ先にデジタルサイネージにするべきだ。他にも魅力化すべきポイントは多い。

     日本では道路空間での動画広告は、原則、ご法度だ。景観やデザインの要因よりも交通安全上の理由といわれている。信号機や警告灯など以外に点滅する光が存在することは危険とみなされている状況だ。
     上の写真にあるように、バス停は歩道に置かれており、歩道までが道路空間なので、残念ながらバス停のサイネージは静止画である。一方で、奥に見えているのは、大型のデジタルサイネージである。ここは、道路上のドライバーからも視認しやすい絶好のポジションであるが、歩道の外側であり(実は歩道が少し曲がっていて有利なサイトになっている)、道路空間ではないために点滅する光、すなわち、動画表示が可能だという整理になっている。

     さて、この現状をよくよく考えてみると、改善可能なポイントがいくつもあるのではないだろうか。
     まず、ドライバーの過失発生防止に神経質になり過ぎていて、同乗者、バスやタクシーの利用者、低速車両の利用者を含めて歩道を利用する人など、大多数の道路空間ユーザの便益を毀損している点を大幅に改善するべきだ。一方で、現状の規制が制定された時代から、ドライバーをサポートするテクノロジーが大幅に進化している点についても、規制の本源的目的に丁寧に照らして再評価し必要な改善を行うべきであろう。

      道路といっても、ユーザの身近な生活道路から、地区幹線や広域根幹的幹線等様々な類型があり、それぞれの類型でユーザに提供されるべき魅力や安全の内容が異なる。
     十分な幅員の歩道である場合は、道路というよりもむしろ広場としての性格の方が色濃くなるが、これらの道路面積の総和は、ある一定の都市面積に占める割合として30%を超える。都市デザインの観点でいえば、都市のユーザができるだけ魅力的に過ごすことができる空間が提供されるべきであり、道路空間はその主要部のひとつだ。これまでは、安全重視で様々な規制をかけてきているわけだが、これからは、どうしたら魅力的になるのか、より安全にあるいはいざという時に頼りになる空間になるのかなどについて、最新のテクノロジーの利点と、それのUXにもとづく有効活用を念頭において規制誘導手法をスマートに企画運用していくべきだ。

     2018年の渋谷のカウントダウンで、道路空間を跨いで東急東横店壁面にプロジェクションマッピングするという企画を規制緩和の一環で実現させたが、単発で終わってしまっているようだ。特に、バス停については果敢なデジタルサイネージ活用による機能性向上と魅力化、そして、災害時等の必須アイテム化に取り組むべきではないだろうか。Maasを進めるなかにあってもキーポイントとなるはずだし、道路空間に既存する電力系制御ボックスや電話ボックス等との統廃合という観点からもしっかりと検討しデザインする必要がある。

     町内会の掲示板についても、いち早くデジタルサイネージ化するべきと考える。道路空間に堅牢かつ電力や通信等のユーティリティ確保も容易な状況で、かなりのコストをかけて建設されているが、すでに、紙を貼るためだけの設備ではあるまい。ユーザのスマホとの連携も当然の機能として備えたデジタルサイネージへと短期間で一斉にマイグレーションしてはどうか。ひょっとすると、最良の行政DXになるかもしれない。ユーザの使い方やニーズの分析によってアジャイルに進化させられれば、街のロボット執事に成長する可能性さえある。
      最初の写真の左側に見える白い工事フェンスには、しっかりとデジタルサイネージがはめ込まれている。工事種別ごとのスケジュールや騒音、気温、天気予報等、効果的な情報が動画で分かり易く表示されていて、しばし、立ち止まって見てしまう。魅力的な空間づくりにデジタルサイネージは必須アイテムなのだ。(S.N.)

    参照;(左)表参道交差点にしっかりと設置された町内会の掲示板。こんなに立派なのにデジタル要素は無い。(右)工事フェンスにはめ込まれたデジタルサイネージは様々な情報を提供してくれる。

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