屋外広告とESGs
Sustainableな社会と生活を目指して、屋外広告が貢献できることの可能性を、今一度見直していきたいと感じる事例を紹介する。
昨今、様々なニュース媒体でSDGs、ESG等のワードを見ない日はない。自治体や企業が持続可能な目標をもってよりよい社会を作り上げていくための取り組みは、標榜するだけものモノではなく、実際に取り組み、結果を出すことを求められる時代になっていると思う。コロナ禍、さらにヨーロッパにおける情勢不安等が重なって、個人レベルでも自分事化して考えざるを得ない状況にあることをひしひしと感じる毎日で、あらためて屋外広告とSDGs、あるいはESGってどんなだろう、という気持ちになって、少し検索してみた。屋外広告に関わる各企業が目指すKPIや計画は、それぞれのウェブサイトで詳細に語られているので、そちらを参照していただくとして、真摯な取り組みでありながら少し気持ちも心も和む事例をご紹介したい。
ミツバチと共存するビルボード@スウェーデン。
気候変動によって多様な影響が懸念されている中、その一つは、私たちの食料システムに不可欠な幅広い作物の受粉に不可欠なミツバチの減少だ。スウェーデンでは、ミツバチの30%が絶滅の危機にあり、ミツバチによる受粉がなければ、人間の食糧の3分の1は脅威に晒されるとのこと。そこでマクドナルドでは「ハチのホテル」を設立。ビルボードの背面には、小さなミツバチホテルが6つ作られている。看板の表は北向き、つまりホテルは南向きとなっており、昆虫にとっては全て緻密に計算された快適なデザインのホテルとなっているとのこと。最初のテストはストックホルム郊外で展開され、将来は地域を拡大してホテルのチェーンを増設予定のようだ。
もう一つ。汚染物質を吸収する上屋付きバス停広告の事例。
屋根に苔のカーペットを敷いたバス停上屋である。
苔はたくさんの小さな葉の集合体なので、空気と触れる表面積がとても広く、多くの空気粒子を遮断して汚染物質を吸収することができる。また、空気中の粒子により栄養が与えられるので、メンテナンス等の手間がかからず自然に長期間、自力で成長し続けることができる。苔シートから入った空気を、クリーンにして吐き出す換気システムも備えられており、このシステムは太陽エネルギーで自給運転する仕組みを目指している。植物による汚染物質の吸収には限界があり、ある調査では2~3%程度だと推測されており、植物のもつ力を最大限に生かす取り組みとして開発された。現在、フランスで実証実験中。
いずれの事例も心和む要素がありつつ、根っこには重要な課題に真摯に取り組もうとする姿勢がある。節約する、使わない、自給する等、地球を守りエネルギーの枯渇を少しでも阻止する取り組みはマストだが、さらに加えて、何かの付加価値を与えることができる屋外広告は、やっぱり魅力的だ、と改めて思った。(Y.T.)