調査事例:媒体価値の可視化
同じ商品を宣伝する広告素材を、異なる広告媒体に掲出した場合、視認者が感じる商品イメージは異なるか、それとも同じか。屋外広告会社による調査事例をご紹介する。
商品広告を複数の媒体で実施する際、選定媒体や組み合わせを計画する際の指標は、様々だ。リーチを広げることにたけている媒体、フリークエンシーを短期で集中的に高めることができる(あるいはコントロールする)ことができる媒体、メディアパフォーマンスのみならず、意識変容を促すことに効果が高い媒体、あるいは具体的な行動を促進する媒体等。また、媒体自体がもつイメージもその一つだろう。
媒体から醸し出すイメージは、複数要因が関わっていることは想定される。例えば屋外広告を考えてみると、媒体種別やサイズ、設置されているエリア特性、来街者や居住者のプロファイル、出稿の多い広告ブランド等。その他の媒体に目を向けると、屋内外での視認環境や、視認する際のマインドセット等も影響するだろう。
それらのイメージを可視化することはできるだろうか。屋外広告社が、広告媒体に掲出されている広告商品の、価格を推定する、という逆引き発想の調査を実施した事例を紹介する。
架空の時計ブランドの広告デザインをTV、雑誌、空港、バス停広告、オンライン広告の5種類のメディアの画像で提示し、その広告の商品の価格がいくらと思うかを選択してもらう、という調査を、世界10か国で実施。(1人につき1媒体のみを聴取)
画像を提示したうえで、「提示されている広告商品について、およそいくらだと思いますか?」という質問を投げかけ、回答は価格帯の選択肢6つから一つを選ぶ形式とした。
調査で使用した媒体はテレビ、オンラインバナー広告、雑誌、ストリートファニチャ、(バス停)、空港の5種類。
結果は、10か国平均で、空港メディアが+13%と最も高い結果となった。
広告を視認する視認者の状況やマインドセット、商品特性等、複数の要因が複雑に影響しあっているとはいえ、同様の商品に対する価格的な価値が、広告媒体によって上乗せされている、というのは面白い結果だと思う。
上記は仮想の高級腕時計ブランドを使ったビジュアルでの調査だが、違うカテゴリーの調査結果からも、似たようなインサイトが見られた。
ある商品カテゴリーに対して、普段消費している価格帯別に対象グループを分け、広告認知を聴取してみた事例がある。例えば、普段使うトイレタリーグッズにかけている金額を高価格帯、中価格帯、低価格帯の三つに分けたグループに、同じ商品カテゴリーの特定ブランド広告に対する広告認知を、複数媒体で聴取。媒体別に、広告認知が高かったグループを比較すると、有意な差が出た。
前者は、広告媒体により、商品価値に影響がみられる事例であり、こちらの調査は、商品の対価と媒体認知の関係を示唆する事例。方向性は違うが、広告媒体の種類と、広告する商品の関係性に、深掘りに値する何かがある、と思わせる結果であると思う。(Y.T.)