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Vol.117

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  • 街の新たな名所に。渋谷区の公共トイレ

    街の新たな名所に。渋谷区の公共トイレ

    「THE TOKYO TOILET」プロジェクトをご存知だろうか。
    多様性を受け入れる社会の実現を目的に、東京都渋谷区の協力を得て、渋谷区内17カ所の公共トイレを新しく生まれ変わらせる日本財団のプロジェクトである。変わりゆく渋谷の新たな変化として、その一例を紹介したい。

     日本のトイレは温水洗浄便座など、その機能面ではインバウンド観光客からも「おもてなし」文化の象徴として挙げられることも多い中、公園や歩道にある公共トイレにおいては、暗い・怖い・汚い・臭いといった理由から、まだまだ利用者が限られる現状のようだ。

     これを社会課題として、誰もが快適に使用できる公共トイレにしようと、東京・渋谷区で「THE TOKYO TOILET」プロジェクトが2020年にスタートし、区内にある計17か所の公共トイレがリニューアルされた。世界で活躍するクリエイター16名が参加し、課題解決に向けた、個性豊かなトイレが誕生している。今回は、その中のひとつで、写真の撮影地である広尾東公園トイレを紹介したい。

     このトイレは、パブリックアートのような大きな照明パネルが大きな特徴だ。グラフィックデザイナーである後智仁氏が手掛けたこのトイレ、打ちっ放しのコンクリートでシンプルな外観デザインだが、入り口とは反対方向の壁面一面にはガラススクリーンに覆われた白い壁が設置されている。これはただの白い壁ではなく、白い布の裏に768個のLEDライトが付いており、布越しに光がランダムなパターンで映し出される。一見、デジタルサイネージのようにも見える。ちなみに光のパターンは実に79億通りもあるそうだ。

     私が訪れたのは夕方5時ごろで、公園全体が徐々に暗くなっていく頃合いであったが、明るい時間帯はさりげなく、暗くなるにつれて光は白く変化して存在感を増し、離れた距離からはいくつもの光が漂っているように見える美しいコンテンツである(公園は車道に面しており、照明パネルはちょうど坂の上り方向に向いているため、広尾駅に向かって坂を下ると正面に見える)。木々の緑に覆われた公園で、ふんわりとした柔らかいアブストラクトな光はアート性に加えて、安全性を高める効果も期待できるだろう。

     渋谷というと駅周辺の大規模再開発が大きく注目されるが、「THE TOKYO TOILET」プロジェクトによって誕生した17カ所の公共トイレは、暗い・怖い・汚い・臭いイメージの払拭にとどまらず、街を優しいイメージにしてくれそうである。散策の新たな楽しみとなりそうだ。(K.S.)

    【参考サイト】
    ■THE TOKYO TOILET
    https://tokyotoilet.jp/

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