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Vol.113

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  • 注目を浴びてしまったディスプレイに貼られた修正シール

    注目を浴びてしまったディスプレイに貼られた修正シール

    先日Twitterで気になるツイートがかなり拡散されていることを知った。東京駅のデジタルサイネージがディスプレイに紙のシールを貼って修正されているというのである。

     当該ツイートは2023年2月23日に投稿され、3月24日の本稿執筆時で103.1万回の表示、4,515件のリツイート、433件の引用ツイート、8,811件の「いいね」、312のブックマークが付いている。現場を確認するために3月9日に東京駅に向かった。

     場所は東京駅の改札内、東北・長野新幹線の南乗り換え口とエキュートの間あたりだ。表示されているのは東京近郊路線図のみで、他のコンテンツに切り替わることはない。それであれば内照パネルでいいと思うのだが、これは確かにディスプレイである。上部には「i」の表示があるので、かつては他のコンテンツが表示されていたことがあり、もしかするとタッチパネル機能があるのかもしれないが定かではない。

     確かにディスプレイ面には3箇所にシールで修正が施されていた。これは2022年3月12日のダイヤ改正によって生じた変更に対応した修正のようだ。LCDとそれを保護するガラス面との間には隙間があるので、正面から見ない限りシールが浮いて見える。このダイヤ改正は2022年3月なので、およそ1年間この状態だったようだ。

     なぜディスプレイに表示するデータを修正できなかったのだろう。こうして導入後に発生することが想定できる費用は想定されていたのだろうか。このサイネージはjekiではなくJR東日本が管理しているものと思われる。確かに鉄道事業者が管理しているこうした掲示物では、アナログの時代から切り貼りで対応してきた経緯があるのは承知している。大きなダイヤ改正以外に細かいダイヤ改正は頻繁に発生しているので、アナログの時刻表には今でもこうした切り貼り対応を見かけることはよくある。しかしデジタルの強みは、この切り貼りをなくすことである。オリジナルのデータを書き換えて、駅構内や他の駅にある膨大な数の修正を、ネットワーク配信で一度にかつ瞬時にすべて修正できることこそがデジタル化の大きな意義であり省力化やコスト削減になる。デジタルサイネージに故障が発生している場合に「調整中」という張り紙を見かけることが多いが、それ以上にこうした処置は結果的にデジタルサイネージの媒体価値を下げる方向にしか作用しないのではないかと思う。こうしてネタにされてしまったことのダメージは大きい。

     そしてもう一つ不思議なのは、どうして1年間もこの状態だったのかということだ。デジタルサイネージの訴求力はこの程度とか、誰も見ていないのではないかというような、存在価値を問われるような議論にならないことを願う。

     その後、先日3月18日に京葉線に幕張豊砂駅が新たに開業するなどのダイヤ改正が行われた。この対応状況を確認するために3月23日に再び現場を訪れたところ、デジタルデータ自体が修正されておりシールは全て無くなっていた。(Y.E.)

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