DSC EXPRESS
Vol.048

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  • リアルとバーチャルはより融け合っていく

    リアルとバーチャルはより融け合っていく

    テクノロジーの進化と共に、リアルな空間とバーチャルな空間を隔てる壁はより一層低くなってきている。今回はそれを感じさせる新たなトピックを紹介したい。

    NTTコミュニケーションズと三井不動産が、愛知県名古屋市にある久屋大通公園を舞台にした共同実験を2021年6月3日から開始した。

    この実験は、NTTコミュニケーションズが提唱する「Smart Customer Experience」の観点で実施され、2021年12月31日まで続けられる予定だ。
    Smart Customer Experienceは、リアルとバーチャルの壁を越えてそれぞれの空間に関する様々なデータを総合的に分析し、新たな顧客体験を生み出すことを目的とした取り組みである。

    近年、名古屋市内では名古屋駅地区を中心に都市開発が進み、さらに今後控えるリニア新幹線開通など、駅周辺において注目を集めてきたが、その勢いに押されがちな印象であった栄地区は、さらなる魅力向上を目指し取り組みを実施してきた。そのひとつとして、栄のシンボルである名古屋テレビ塔と久屋大通公園は2020年9月18日、再開発でリニューアル。公園の北エリアは「Hisaya-odori Park」という三井不動産が手掛ける商業施設エリアとなっているが、今回の共同実験ではこのエリアを「Hisaya Digital Park」としてバーチャル空間化しているようだ。実際に営業している8店舗をバーチャル空間にも配置し、実店舗とバーチャル店舗のそれぞれから得られるデータを連携し統合的に検証することで、価値創造につなげるらしい。


    ユーザーはPCやスマートフォンなどから、Hisaya Digital Parkを散策することができる。UIはGoogle ストリートビューと似ており、公園は360°のCGで作られたVR空間で表現、美しく晴れた空を見上げたり、公園内の芝生や水辺を見渡したりすると、平面の施設マップなどでは得られない雰囲気を味わうことができる。4つのゾーンの地点移動や情報を表示させる際に、自分がどう動けばいいのかもシンプルで分かりやすい。また、施設の外壁には表示灯株式会社によるバーチャルサイネージも設置されており、広告も放映される仕組みとなっている。

    さらに、配置されているバーチャル店舗には入店することができる。公園同様、店内の画質がリアルである。
    こちらはCGではなく高精細のカメラで撮影された実写映像になっており、360°のパノラマビューである。陳列してある商品までとても綺麗に見え、ここから直接商品を買うことができれば、コロナ禍における店舗救済にも繋がる可能性も考えられる。
    店内各所の情報表示ポイントには、店舗の公式ページやSNS、ECサイトへリンクするなど一定の仕掛けがあり、探しながら店内を散策するのも、バーチャル空間を楽しませてくれる。

    Hisaya Digital Parkは、映像や画像など配置できるコンテンツの豊富さから、バーチャル空間を体験して得られる価値がより一層リアル空間に近づいていることを感じる。リアルとバーチャルをうまく融合したイベントなどを開催すれば、新しい顧客体験を生む可能性もあるだろう。また、他エリアへの遷移が実現できれば、より楽しいバーチャル空間になることだろう。
    今のところはGoogleストリートビューのエリア特化版であり、当該エリアに存在する店舗にとってのメリットや広告価値に寄与する可能性は十分に感じた。今後はさらに、バーチャルとリアルから得たデータをどう活かしていくのか、動きに注目したい。(K.S.)

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