DSC EXPRESS Vol.037をお届けします。 毎月5日、15日、25日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。
関東では電車に乗れば必ず目にすると言っても過言ではない車内デジタルサイネージが、関西でも増えてきている。関東では一面で広告、もう一面で旅客案内情報を表示するドア上2面タイプでほぼ統一されているのに対し、関西ではさまざまなタイプが乱立。今回は特徴的な関西の車内デジタルサイネージに注目してみたい。
関西における車内サイネージを活用した情報提供が開始されたのは2005年2月である。JR西日本が導入した新型車両321系に初めて車内サイネージが搭載され、「WESTビジョン」という名称でサービスを開始した。この「WESTビジョン」、当時導入が進んでいたJR山手線のドア上とは異なり、天井に吊り下げる構造で設置され、どうして東と西で設置形態が異なるのかとたいへん話題になったと聞いている。JR西日本はクロスシート車両が多いので、クロスシートに座っているお客様から見やすいように天井設置になった等諸説あるが、321系自体はロングシート車両であるし今でも真の理由はよくわからない。いずれにせよ、関西においても車内サイネージの展開が本格的に始まったのである。 しかしながら、路線ごとに新型車両に集中的に置き換えることで車内サイネージの搭載率が向上する傾向にある関東に対し、更新等を繰り返し、車両を比較的長く使う関西においては、なかなか車内サイネージの搭載率が向上しないという課題に直面する。この状況を打開するために、「WESTビジョン」の改造搭載の検討が始まり、2018年デジタルサイネージアワードで表彰された新潟地区E129系に搭載されたローコスト車内ビジョン成功の後押しもあり、新潟地区とはシステム等は異なるが、主に新快速で運用される223系車両330両に対する改造搭載が決定する。この改造搭載「WESTビジョン」はコスト等の関係でドア上設置となり、大阪環状線新型車両323系に搭載された関東標準タイプのドア上2面車内サイネージを含めると、3種類の「WESTビジョン」が登場することになり、バラエティ豊かな展開となっている。 このような状況下で、先日注目すべきプレスリリースがあった。京阪電気鉄道が広告用のデジタルサイネージを6000系および13000系計197両に対し、改造と新造で設置するとのことである。2022年度中に工事を完了し、広告用と旅客案内用のビジョンをドア上に千鳥配置で設置するとのことなので、JRの223系改造搭載車とほぼ同様の形態になると思われる。すでに一部の車両には搭載が始まり、現在はすべての画面で旅客案内情報を放映している。京阪も比較的古い車両が多いので、JR西日本同様、改造で面数を増やし搭載率を上げる方策をとったのであろう。 阪急電鉄や大阪メトロにおいても、車内サイネージ搭載車両は確実に増加している。両社とも、1枚仕様の横型ハーフサイズビジョンを採用する等、各社ごとに異なった仕様が見られるのも関西の特徴である。このような様々な仕様の車内サイネージが設置される背景には、各社の試行錯誤も隠れていると考えると、たいへん興味深い。 今回取り上げなかった事業者についても、様々な仕様の車内サイネージが設置されている。現在は一部都府県にコロナ蔓延防止のための緊急事態宣言が発出されている状況であり、県等を跨ぐ移動がなかなか自由にできない状況ではあるが、状況が改善された折には、関西のバラエティ豊かな車内サイネージに触れる旅でも、計画されてみてはいかがだろうか?(K.T)