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Vol.036

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  • 乗客の気持ちに寄り添う、電車内のデジタルサイネージとは

    乗客の気持ちに寄り添う、
    電車内のデジタルサイネージとは

    緊急事態宣言下でも、就業者や学生など、電車に乗って移動する人たちは大勢いる。今回はそんな乗客たちが目にする、電車の車両内に設置されたデジタルサイネージに注目してみたい。

    2021年1月7日、東京・神奈川・千葉・埼玉に、新型コロナウイルス対策で2回目となる緊急事態宣言が出され、政府からの様々な要請の中に、事業者に対する「出勤者数の7割削減」も盛り込まれた。それでも、平時に比べれば少ないのであろうが、就業者を始めとする電車の乗客はそれなりにいる。今回はそんな乗客たちが目にする、電車の車両内に設置されたデジタルサイネージに注目してみたい。
    JR東日本や東京メトロを例に挙げると、ドア上部に設置されたデジタルサイネージは、JR東日本ではトレインチャンネル、東京メトロではTokyo Metro Vision(以下「TMV」)と呼ばれる。通常のCMの他、情報番組型のCMや、ニュースや天気予報といった、乗客の滞留時間を狙った情報コンテンツで編成されたロールが、繰り返し放映されるのが特徴だ。
    ロールの長さは週によって異なり、通常であれば大体15分~20分程度だが、緊急事態宣言下である今年の1月においては、昨年の同月と比べ、トレインチャンネル、TMV共に総じて短く、週によっては最大で3分~4分程短くなっている。また、一般のCMは減少し、鉄道会社の「自社CM」の占める割合が高い。
    通勤途中にそんなデジタルサイネージを眺めていると、サテライトオフィス、オンライン内見ができる不動産物件、手洗いやマスクによって荒れた肌をケアする軟膏、コロナ記事を扱った新聞社のCMなど、現況を反映したCMに対しては自然と共感を覚えた。また、新型コロナウイルス対策の度重なる作業に追われながらも、乗客に感謝を伝える鉄道会社のCMには胸を打たれた。つまり、その時自分の置かれた状況や心境にマッチした情報(メッセージ)は、ストレートに強く届くことを改めて実感した訳である。
    車両内のデジタルサイネージは移動という日常生活動作に密着し、強制視認性が高く、動画の特性からメッセージが伝わり易いのが強みであるが、乗客のシーン(状況や心境)にもっと寄り添い、その時必要とする情報をもっとタイムリーに発信すれば、メディアとしての価値は更に高まるのではないだろうか。時勢を反映した情報、季節・天気・時間帯に合った情報、生活に密着した沿線の情報など、要素は色々と考えられる。
    人の働き方が変わり、乗客の数が以前ほどには戻らないと言われる中、鉄道広告もリーチを稼ぐのは難しくなったのかもしれない。しかし、今以上に乗客の気持ちに寄り添う情報を発信し、温かみのある質の高いメディアと乗客に再認識されることで、リーチだけではないメディア価値をもっとPRできるのではと、この状況下で感じた。(K.S)

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