関西エリアにおけるデジタルサイネージ最新動向
毎年デジタルサイネージを活用した優秀な展開事例やクリエイティブに対し、「デジタルサイネージアワード」と称した表彰が一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム主催で行われている。本年は関西エリアから2作品が優秀賞を受賞した。今回はこの2作品を中心に、関西エリアにおいても徐々に活用シーンが増えているデジタルサイネージの最新動向について紹介したい。
1.ららぽーとEXPOCITY「FILM LEDパネルによる2連大型デジタル懸垂幕」
【デジタルサイネージアワード2022優秀賞受賞作品】
ららぽーとEXPOCITY は万博公園に隣接して建設された大型商業施設であり、2015年11月に開業している。この懸垂幕は開業から6年目を迎えたららぽーとEXPOCITYのリニューアルのメインプロジェクトとして設置され、2022年3月より稼働を開始した。「光の広場」の吹き抜けに大幕の代わりにフィルムLED製の大型デジタル懸垂幕ビジョンを2基設置したもので、1基の大きさは、約2m(幅)×8m(高さ)であり、フィルムLEDを両面加工することで広場のどこからでも見ることができるような構造にしたとのことである。確かにどの角度から見ても高精細の映像をはっきり見ることができ、施設のイベント告知等、効果的な情報提供に寄与していると感じた【写真1】。このような懸垂タイプの透過型LEDビジョンとしては、2016年に千葉県のイオンタウンユーカリが丘に設置されたグラスビジョン【写真2】が当時話題となったが、このグラスビジョンと比較すると輝度、高精細度も増しており、技術の進歩を感じることができる。ショッピングセンターを中心に吹き抜けの空間は各所にあるため、懸垂幕ビジョンの今後のさらなる普及にも期待したい。
【写真1】ららぽーとEXPOCITY フィルムLED製大型デジタル懸垂幕ビジョン
【写真2】イオンタウンユーカリが丘 グラスビジョン(2019年撮影)
2.ホワイティうめだ「サービスソリューション提供型デジタルサイネージ」
【デジタルサイネージアワード2022優秀賞受賞作品】
ホワイティうめだはJR大阪駅、阪急・阪神大阪梅田駅および大阪メトロ梅田駅・東梅田駅に近接している地下街であり、他の地下街とも相まって日本有数の規模の地下街を形成している。この地下街に頭上吊り下げタイプの2連型32インチデジタルサイネージが204面設置され、2022年4月より稼働を開始した【写真3】。
もともとホワイティうめだを運営する大阪地下街㈱が地下街防災システムの整備等に積極的に取り組んでいたこともあり、非常時は施設の防災設備や既設サイネージと連携し、防災情報の自動配信を実施できるシステムとなっている。また隣接する2面に別々の映像を放映することも可能であり、施設の案内だけでなく第三者広告運用も行うことで、デジタルサイネージ事業として収益を上げることも目指している。このようなシステムと取り組み全体が評価され、デジタルサイネージアワード2022優秀賞を受賞している。
頭上に2連型の同期したデジタルサイネージが続く光景はおそらく日本初であり、たいへん画期的である。ただし同空間に縦長の同期型デジタルサイネージと共存しているエリアもあるため、両タイプのデジタルサイネージをそれぞれうまく活用し利用者にどのように効果的な情報提供を行うかを考えていくことも今後重要であると感じた。
【写真3】ホワイティうめだ サービスソリューション提供型デジタルサイネージ
3.各地で進むデジタルサイネージ化
関西では今までLED表示や固定看板を活用することが一般的であったサイン類についても、最近デジタルサイネージ化が急速に進んでいる。JR新大阪駅の事例を紹介したい。
1点目は新幹線新大阪駅コンコースの新幹線発車標である。LED表示から最近デジタルサイネージに更新された。2連の横長デジタルサイネージを組み合わせ、停車駅案内や英語案内等多彩な情報提供を行っている。高精細な黒枠のデジタルサイネージを組み合わせているため、よく見ないとデジタルサイネージと気づかないが、デジタルサイネージを活用することで提供情報のバージョンアップが実現した好例であるといえる【写真4】。
2点目はJR新大阪駅在来線改札内の商業施設「エキマルシェ新大阪」のデジタルサイネージで、フロアガイドを中心に各種施設情報を表示している【写真5】。昨今店舗の入れ替え等に伴う情報更新がどの商業施設においても多くなっていることを踏まえ、フロアガイドを固定式のサインからデジタルサイネージでの表示に移行する事例が関西でも増加しており、これはまさしくこの典型例である。
【写真4】JR新大阪駅新幹線コンコース発車標
【写真5】「エキマルシェ新大阪」フロアガイド
以上話題性のある取り組みから地味な取り組みも含め、関西エリアにおけるデジタルサイネージの最新動向を紹介させていただいた。機会があればぜひ現地で確認していただければ幸いである。(K.T)
※「デジタルサイネージアワード2022」の受賞作品については、以下の一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアムHPにおいて詳しく紹介されておりますので、ぜひご覧ください。
https://digital-signage.jp/openevent/award/2022winner/