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Vol.061

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  • ショパンコンクール~YouTube~に見るクラシックコンサートライブビューイングの可能性

    ショパンコンクール~YouTube~に見る
    クラシックコンサートライブビューイングの可能性

    約50年ぶりの快挙、しかも日本人のW入賞ということで大きく話題となったショパン国際ピアノコンクール。YouTube配信も視聴者数を集め、再生回数は100万回を超えている。これはクラシックコンサートのライブビューイングの可能性も同時に表しているのではないだろうか。

     ショパン国際ピアノコンクールは、ポーランドが国をあげて開催している世界的なコンクールだ。5年に1回の開催で本来2020年開催のところ、オリンピックと同じく1年延期になり、今年2021年に開催された。長い予選を経て先日10月20日がファイナル(本選)、日本時間の21日朝にファイナルの結果が決まり、日本からのコンテスタントが2位と4位に入賞したのでニュース等でご覧になった方も多いだろう(たぶん)。
     そしてこのコンクールは、何百時間にもわたる予選と本選の全ての演奏を、YouTubeライブと300本以上のYouTubeアーカイブで無料配信している。コンクールとは言え非常にレベルが高いので、もはやコンサートを聴いているのと同じかもしれない。(このやり方はイベントの運営施策という意味でもたいへん興味深いが、今はそれはさておき。)

     クラシックのライブコンサートは原則としてPAの入らないナマの音で聴くものなので、マイクを通してインターネットで配信するYouTubeでクラシックコンサートを聴くというのは、かつては、まったくピンと来なかった。けれどもこの10年ぐらいの間に、音声コーデックが進化したし、通信環境もどんどん良くなったということもあり、驚くべきことに、今回のショパンコンクールのYouTube視聴者コメントを読むと、けっこう演奏者ごとの音色の違いを話題にしているし、音色そのものに癒されたり、細かい音色の変化に感動したりといったことを多くの人が体験している様子が見てとれる。

      ショパンコンクールの配信は無料ということも大きいとはいえ、2位になった反田氏のファイナル演奏の動画は公開後2日でそろそろ再生数が100万回に届こうとしており、これはやはり視聴体験に価値があると感じている人がそれなりの数あるということだろう。クラシックコンサートの配信が、興行として成立するという意味での現実味を帯びてきたと思う。

     同様のことは、きっと演劇(ストレートプレイ)や伝統芸能にも言えるはずだ。
     桁違いに売れるコンテンツが他にあることはわかっているけれど、多くのジャンルの可能性を実現することには意味がある。
     もちろん、コンサートホールや劇場に出向かないと体験できないことも、まだまだたくさんあるが、これだけの素地ができてくれば、集まってライブ配信を楽しむライブビューイングも、工夫次第できっと楽しくできる、という段階に来たのではないかと思った今回のコンクール配信であった。(Y.K)
    ・ショパンコンクールのYouTube(入賞者コンサートの様子)は、こちら。

    ・写真は、東京オリンピックのライブビューイング会場になる予定だった新宿住友ビル三角広場を2021年8月初めの日曜日に撮影したもの(ライブビューイングの中止はこの時点で決定していて残念ながら賑わいは無い)。
    ・画面の画像はショパンコンクールと同種の会場のフリー素材のハメコミ。

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