DSC EXPRESS
Vol.060

DSC EXPRESS Vol.060をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。

  • オフィスビルサイネージの広告活用

    オフィスビル内サイネージの広告活用

    オフィスビルの中には、様々なサイネージがある。パブリックスペース、エレベーター内、入居企業のサイネージ。近年そこに広告を配信する取り組みが活発になってきた。その可能性をどう読むのか。

     オフィスビルや商業施設など、ビルにつけられるサイネージは大きく分けて3つの役割を担っている。1つは情報提供をおこなうインフォメーションボードとしての役割。2つ目は広告・販促メディアとしての利用。3つ目は空間演出・環境演出・エンターテイメント。
    2つ目に広告・販促メディアとしての利用を上げたが、2019年に760億円を超えたといわれるデジタルサイネージ広告市場*1の6割以上は交通広告が占め、商業施設の店頭メディアは(伸長が期待されるものの)交通広告の1/5に過ぎない。そしてそれらの中にオフィスビルの影は見えず、広告メディアとしての活用はほぼされていないのが現状である。
    *1 CCI調べ「デジタルサイネージ広告市場調査」
    https://www.cci.co.jp/news/2020_11_25/01-29/


    図:上記*1より引用

     そのような中で、オフィスビル内のサイネージを広告メディア活用するチャレンジが、スタートアップを中心に活発になってきている。
     オフィスビル内にあるサイネージの代表的なものは、エントランスや共用部分などのパブリックスペース、エレベーターの中、入居企業の社員向けや来訪者向けインフォメーションサイネージなどであるが、その中で最も広告活用が活発なのはエレベーター内である。みなさんもご承知かと思うがエレベーター内広告の先駆けは中国であり、広告メディアとしての存在感も大きい。以前は「広告素材の差し替えにアルバイトがSDカードを持ってビル間を走っている」などという話もまことしやかに耳にしたものだが、Focus Media、Tikin Media、Xinchao Mediaなどのエレベーター広告を手掛ける各社に中国版GAFAであるBAT3社がここ数年で出資した額は、100億円単位から1,000億円単位にまで巨大化している。

     そして日本でもエレベーター広告の動きが活発化してきた。日本ではエレベーターのシェアの8割をメーカー系が占めているのだが、その各社が相次いでエレベーター広告の新興企業と連携をするようになっている。株式会社東京は三菱地所他から3.6億の資金調達をし、三菱地所と合弁会社を設立している。INFORICHへはジャパンエレベーターサービスホールディングスが出資、CRAIDはエス・イー・シーと組み、mark&earthはフジテックと提携しマイクロアドデジタルサイネージとの連携もおこなっている。

    東京×三菱地所:https://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec191105_spacemotion.pdf
    INFORICH×JES:https://pdf.irpocket.com/C6544/hI2W/iOEx/hT9I.pdf
    CRAID×SEC:https://secev.co.jp/wp-content/uploads/2020/02/elev_info.pdf
    mark&earth×フジテック:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000049045.html

     インターネット広告では企業のIPアドレスを狙い撃ちしたオフィスワーカーターゲティングモデルが以前から存在したが、それ以外のオフィスワーカーへのアプローチは、ビル外、通勤途中を狙ったものが殆どであった。(交通広告のプライムタイムは通勤時間である)これらのターゲットセグメントにはどうしても限界がある。そうした時、オフィス規模や個別企業へと絞り込んでいけるオフィスビル内へのアプローチには、何か今までにない可能性を感じる。
      一方で、広告サイネージメディアの価値指標の4つ、「サーキュレーション(接触者数)」「注目度(大きさや設置場所)」「滞留時間(広告接触時間)」「特別な気持ちになっている場所か(コンテクスト、文脈)」を考えると不利な要素が多いのも事実である。働き方DXによるオフィス出社人数の低減、最上階までCM一本分あるかという乗車時間、そしてエレベーター内の微妙な緊張感。加えて広告ビジネスに常についてくる競合排除(その企業やその企業のお客様に競合するCMは出せない)の観点。
     このようにエレベーターサイネージでの広告ビジネスは可能性と不安要素の両方を持っている。しかしながら、同じようにネガティブな要素を持ちながら見事にそれを払拭した広告ビジネスがある。タクシーアドという先達である。タクシーアドは広告サイネージビジネスに領域開拓の余地がまだまだ残されていることを証明した。
     ブレイクスルーがなされるからこそ成長市場になる。注意深く見守っていきたい。(K.K)

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