デジタルサイネージアワード2019授賞式・審査員講評

デジタルサイネージアワード2019授賞式

デジタルサイネージアワード2019の授賞式は、2019.6.12にデジタルサイネージジャパン2019(幕張メッセ)で行われました。
 




各賞が発表され、各賞プレゼンテーターから盾の授与が行われました。


プレゼンテーターは下記のとおりです。(発表順 敬称略)

グランプリ

 中村 伊知哉 (一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム)

準グランプリ

 角 隆一 (日本電信電話株式会社)

テクノロジー部門

 土屋 敏男 (日本テレビ放送網株式会社)
 佐村 智幸 (パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社)

IoT AI部門

 山本 孝 (株式会社ジェイアール東日本企画)
 伊能 美和子 (タワーレコード株式会社)

クリエイティブ部門

 西村 真理子 (株式会社HEART CATCH)
 前田 鎌利 (株式会社固)
 比企 宏之 (LINE株式会社)

広告部門

 比企 宏之 (LINE株式会社)
 吉田 勝広 (株式会社オリコム)
 川村 健一 (電通アイソバー株式会社)

受賞作品の詳細は、受賞作品のページをご覧ください。(写真からも受賞作品のページにリンクしています。)

授賞式後半は、吉田氏の司会で審査員による振り返りトークを行いました。


会場前では会期中、各作品の動画放映を行いました。受賞作品の紹介動画は、受賞作品のページでご覧いただけます。

審査員講評

グランプリ、準ブランプリについて、および全体を通しての、審査員講評です。(五十音順 敬称略)
 

伊能 美和子 (タワーレコード株式会社)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
歩行者用信号が赤になるタイミング、つまり自動車用信号機が青になるタイミングと連動して待ち時間に見てもらえるような演出がとてもユニーク。訪日外国人に人気の忍者が、ビルの意匠を活かした違和感のないプロジェクション・マッピングによってさまざまな術を駆使するというクリエイティブに圧倒されました。場所やビルの特性を考え抜き、デジタル技術を駆使してこそ実現できた作品だと、審査員一同が感嘆した作品です。
2.ジュラシック・ピラー
六本木という場所で、デジタル、ビッグデータ、クリエイティブを掛け合わて、映画の告知並びに近くの映画館とのデータ連携による空席情報の案内による誘導と、まさにデジタルサイネージだからこそできる、やって意味のある広告・販促の手法を実現した作品だと思います。欲を言えば、画面上にQRコードを出して、そのままチケット予約・販売・決済までできると、行きたい!と思ったチャンスを逃さないものになるのではないでしょうか?
3.全体を通して
2007年にデジタルサイネージコンソーシアムを発足させたときに、今後、デジタルサイネージはクラウド連携、データ連携してまったく新しいメディアになるだろう、考えていたことがようやくトライアルではなく、本格的にビジネスとして実装されてきたな、というのが今回の応募作品から感じられました。
今年はラグビーのワールドカップが開催され、それに合わせて5Gのプレサービスが開始され、来年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、5Gは商用化されます。こうしたタイミングで、デジタルサイネージもメディアとしてさらに大きな進化を遂げていくと考えていますが、その予兆を感じさせるものが多くありました。
「街がIoT化する」ということはどんなことなのか、皆さんが考える良いきっかけにしていただけるといいなと思います。

川村 健一 (電通アイソバー株式会社)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
サイネージを、まるでプロジェクションマッピングのように使った演出が見事でした。サイネージの特徴は、時間、場所、そこに集う人であり、その中間点にクリエイティブのヒントがあると実感させられた作品。信号をカメラで読み取り、赤信号になると映像が流れる一工夫もあり、サイネージの今後の可能性を感じられる作品だった。
2.ジュラシック・ピラー
エンタメ要素だけではなく、映画館の空き情報のチェックを行う導線もあり、興味喚起から着地までを見据えている点が良かった。サイネージでインタラクティブを実施する場合、複雑な操作にした結果、ユーザーに使われないケースが散見される。この作品は、シンプルな操作で体験を成立させた結果が体験者数にも現れており、体験型広告としてバランスの良い事例だと感じた。
3.全体を通して
メディアミックスの中でのサイネージ事例、時間、場所、人を上手く捉えたクリエイティブ、アートのキャンバスとしてサイネージを活用している作品、それらを下支えるBtoBの取り組み等、同じ土俵の中にさまざまな作品があり、まさにサイネージの今を象徴するダイナミックがあった。
現状、静止画や映像を流すシンプルな媒体が主流なものの、株式会社ビズリーチの施策では、メディアミックスの中で上手くサイネージの特徴を活用し、数字として明確な成果を上げていた。
一方、サイネージの制限が少ない場所では、時間、場所、そこに集う人の特性を上手く使い、その場にいる人のココロを見事動かしている。また、表現の裏側では、メディアとしてのインフラの整備も重要で、インフラが未整備だと供給側に無駄な労力が発生し、良いモノが生まれる障壁になる。この問題に関するアプローチとして、交通広告デジタルサイネージ入稿データ共有プラットフォームTADSS(タッズ)や、5G PROJECTION CARは興味深い動きで今後の動きに注目したい。
5Gにより、メディアとして扱える情報が格段に増え、サイネージをめぐる今後の可能性は計り知れなくなると感じた。今後も作り手として、そして受け手として、サイネージのクリエイティブを楽しんでいきたいと思えるアワードでした。

佐村 智幸 (パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
インバウンド対応でNINJAのテーマを採用の良しあしは別として、サイネージに一番重要である「目をひく、惹きつける」ということができているコンテンツであることが非常に評価できる。
2.ジュラシック・ピラー
ンタラクティブ、GAME性を利用したOOHはこれから増えるかもしれないと感じさせる作品。
3.全体を通して
クリエイティブ・WOWな作品が増えてきており、且つ、質が向上している感じがする。ライブ配信や空間演出、IoT、5Gなどの活用によって一昔前のデジタルサイネージのイメージががらりと変わり、数年後には違う名前のメディア名が誕生してもおかしくない気がする。

土屋 敏男 (日本テレビ放送網株式会社)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
渋谷のあの交差点の上という環境で”壁をつながりにする”など、場所と言う縛りをメリットに変えると言うポイントがこれからのデジタルサイネージのポイントになると思いました。
2.ジュラシック・ピラー
電車の待ち時間と言う必然的に生まれる空白を利用すると言うポイントが面白いです。
3.全体を通して
今までの外にある看板がデジタル化しただけと言うことではないその場所にある、こう言う動線上にある、こう言う気持ちの人の目線の先にある、などその場所の”人の気持ち”から考えていくデジタルサイネージは今までの広告にない可能性を感じました。

西村 真理子 (株式会社HEART CATCH)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
忍者の採用、ビルとの同化。インバウンド観光客だけではなくいつもMODI前を通っている人間でも目を留めてしまうエンタメ性の高さが審査員の中で圧倒的評価を得ていました。
2.ジュラシック・ピラー
映画のコンテンツを活用しつつも、駅構内という環境を活かしたアレンジで見込み顧客にアプローチしている例が高く評価されました。
3.全体を通して
サイネージ配信の仕組みや、5G時代のプロジェクションマッピング需要を見越したパッケージなど、表現だけではなく仕組みのアップデートも印象的でした。表現方法も「サイネージ」を飛び越えエンタメ性高い表現が増え、あらゆる面でのサイネージの進化が体感できた2019年でした。

比企 宏之 (LINE株式会社)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
見ていて楽しい!海外のかたに向けたわかりやすく日本人も楽しめるコンテンツ。デジタルサイネージのメディア面での表現としてすごくよい作品でした。
2.ジュラシック・ピラー
興味を持ってもらう→参加して楽しむ→送客までの流れを映画の世界観でシームレスに実現し、デジタルサイネージの本来の目的をエンターテイメント的な観点で昇華した素晴らしい作品。
3.全体を通して
様々なスタイルでのノミネート作品があり、審査中にデジタルサイネージとは?と考えさせられました。これからも自由な発想で過去にとらわれず、様々な表現や仕組みのデジタルサイネージが生まれていけばと思いました。

前田 鎌利 (株式会社固)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
日中、夜間とそれぞれ楽しくインバウンド向けにサイネージの可能性を最大限活かした素晴らしい作品。日本のアイデンティティーがユニークさと共に伝わった。
2.ジュラシック・ピラー
映画の雰囲気と興奮をサイネージを通して伝えながら、リアル連携も行われた秀逸かつ練り込まれた作品。サイネージが持つ本来の実績への誘導がされていた。
3.全体を通して
これまでにないようなダイナミックなものから新しいテクノロジーを取り入れたものなど、サイネージの未来がさらに表現の幅を広げていくようなワクワクを感じ取れた。

山本 孝 (株式会社ジェイアール東日本企画)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
ビル壁面の大型ディスプレイならではの企画と思います。屋上ではなく外壁に設置されているロケーションを活かした壁面を移動するninjaのインスタレーションは理屈抜きに面白くわかりやすいです。またこういったクリエイティブのシリーズ化やからくり時計のような使い方も集客や拡散・話題づくりにつながると思います。様々なロケーションでこういった質の高いインスタレーションが表現されることで、街の価値も上がっていくのではないでしょうか?
2.ジュラシック・ピラー
DDOOHの領域で過去にも様々なトライアルを行っている六本木のホームビジョンですが、駅という公共スペースでインタラクティブなコミュニケーションにチャレンジする意義はとても大きいと思います。案内パネルとしてのタッチパネルを除けばインタラクティブな体験ができるサイネージはまだまだ多くないので、こういった映画の世界観を表現する事例はもっと増えていくと面白いです。今回は同時に最寄り映画館の空席情報がリアルタイムで表示される等、映画告知の広告としても完成度が高く、評価できます。
3.全体を通して
年々、デジタルサイネージアワードのエントリー作品のレベルは上がっていると思います。それだけハード・ソフト・コンテンツの各分野ともに成熟してきたと言えるのではないでしょうか?
屋外ビジョンや駅、イベントスペースやスタジアム、ショップ等々、あらゆる場所でデジタルサイネージは情報と感動、新たな体験を提供していることが、毎年のエントリー作品、受賞作品を拝見すると実感できます。このアワードが多くのサイネージ関係者やクリエイターに注目されて、ますますデジタルサイネージの表現のフィールドが広がっていけばいいな、と思っています。

吉田 勝広 (株式会社オリコム)

1.WOW! NINJA in SHIBUYA
サイネージ画面をビルの壁面と同化させたり、横断歩道の信号が赤になった時に映像がスタートするようにしたり、音声を効果的に使用していたが、大型ビジョン周辺の現場環境が分からなければ考えつかないポイントだ。優秀なクリエイターほど「OOH表現は、まず現場で考える」人が多い。おそらくこの作品もそうだったに違いない。これらに気づき表現に結びつけた着眼点は優れたものと言えるだろう。PR効果を発揮した点も評価できる。他のアワードでも受賞した優秀な作品だ。おそらくこれを見た訪日外国人からは「amazing!(アメージング!)」という最高の褒め言葉が出たに違いない。
2.ジュラシック・ピラー
サイネージにセンサーを付けたインタラクティブな展開では、技術的な面に目が行きがちだが、大切なのは「世界観とのマッチング」だ。この作品はスリリングな映画の世界観を見事に具現化している。さらに「モノ消費よりコト消費(リアルな体験イベントに興味)」「ゲーミフィケーション(ゲーム的要素を加える)」「SNS連携」「ダイナミックDOOH(映画館の空席情報を表示)」など、成功する要素を多く取り入れている点も評価できる。ただ、個人的には主役の恐竜「ブルー」と仲良くできるシーンをやりたかったなと思った。
3.全体を通して
サイネージ事業者の間で有名な「映画マイノリティリポート」の世界を超えたなという感じだ。デジタルサイネージのハードウェアや同時に使われるセンシングや配信の技術は目覚ましい勢いで進化しているが、映像の表現能力や処理技術も進化していることがわかった。特にインターネットとの結びつきが年々強くなる傾向がある。クラウド上のコンテンツをリアルタイムに表示するシステムをとることが一般化しているだけでなく、WebニュースやSNSなどネット上へ情報拡散、自社サイト誘導を狙う起点として使われるケースも多く見られた。そんな中、交通広告媒体社らがデジタルサイネージの入稿仕様の標準化という業界の課題に取り組み受賞したのは、「競争から共創へ」と思わせ、サイネージ広告の普及に弾みを付けさせる出来事となっている。他の業界関係者も注目して欲しいと思う。

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