JR秋葉原駅ではじまった新たなトライアル
~プロジェクター広告の可能性~
広告用途で使われるディスプレイデバイスは従来からLCD(液晶ディスプレイ)が主流であり、近年はLEDディスプレイを活用した事例が急速に増加しつつあります。そのようなハードウェアトレンドの中で、今号では駅構内でプロジェクターを活用した広告展開の可能性を検証する取り組みをご紹介します。
10月6日(木)に(株)ジェイアール東日本企画(jeki)は「JR秋葉原駅で大型プロジェクター広告『AKIBA DAWN(アキバドーン)』の放映開始」を発表した。これは従来、大型のシート広告として販売していた中央改札内上部の大型壁面をスクリーンとして、3台のプロジェクターで広告コンテンツを投影し商品化したもので、同社とパナソニック コネクト(株)が共同で実施する約1年間の「販売実証」という位置づけとなっている。

プロジェクターは従来からオフィス会議室等、主に屋内で使用されており、近年では商業施設やアミューズメント施設における環境演出用途での活用も増えている。他の手法より設置工事が軽易で自由に画面の位置やサイズが決められる、投影していない時に目立たない等のメリットがある一方、環境照度が高い場所では見えにくく、長期間の投影ではランプ寿命によるメンテナンスコスト等の懸念点もあった。
昨今ではプロジェクター製品自体の性能も大幅に進化し、本実証で使用している液晶レーザープロジェクターは20,000lm(ルーメン:明るさの単位)という高輝度での投影を、軽量・小型かつ省電力で実現している。【参考:現地動画】
 
jekiでは2020年にもプロジェクターを活用した広告の実験を品川駅で実施しており、今回はそのノウハウを踏まえつつ、より現実的な展開となっているが、プロジェクト担当者によれば、「広告の申し込み状況も好調であり、利用した広告会社からも『(思ったより)ずっとキレイに映っている』、『大きなスクリーンは迫力がある』等のポジティブな意見とともに、『もっと色濃く映してほしい』、『音声を入れたらいいのではないか』等の改善点も寄せられている」そうだ。またSNSでもこのAKIBA DAWNの投稿は多数拡散されているとのことであった。
テクニカルな部分を担当したパナソニック コネクトからは、重視したポイントとして「映像の継ぎ目を重ね合わせるブレンディングとコンテンツの矩形補正(歪みの補正)を正確に行い大型で迫力のある映像投影の実現に留意した」、「現地での梁の影響を最小限にするようブレンディングエリアの微調整を行った」、「複数回の投影検証でグレーのスクリーン素材を採用」、「カメラを使用して投影ズレを自動修正する機能を実装した」等々のコメントがあり、関係者の多くの試行錯誤と検証を経て実現したプロジェクトであったことがうかがわれる。
 
是非、機会があれば現地でご覧いただき、この1年間のトライアルの経過とともに、これからの広告用途プロジェクターの可能性にご注目いただきたい。
(T.Y.)