サイネージも使いよう—店舗売上を最大化する活用法
店頭に当たり前のように設置されたデジタルサイネージ。多くの店舗では、商品情報を流すだけの「動く看板」で終わっている。しかし、使い方を変えるだけで、顧客との関係を深め、リピーターを育て、安定的な売上を生み出す仕組みに変えることができる。その秘訣は、サイネージを「起点」として捉えることにあった。
江戸の頃より道具というものは進化して使いやすくなるのが常だが、進化せずとも使い方によって格段に有効なツールと化すのも世の常である。
さて、デジタルサイネージの店舗での利用は、以前にも増して大きく広がってきており、ショッピングモールなど施設内店舗では、業種を問わず、店頭の壁面やエントランスにサイネージが当然のごとく設置されている。

デジタルサイネージが看板やポスターと異なる点は、届けられる情報量が多く、簡単に表示変更ができ、最適なタイミングで最適な情報を提供できることだ。このメリットを活かせば、ターゲットに対して効果的なアプローチが可能となる。これだけでも非常に有用な販促ツールである。
その場で迷っているお客様にダイレクトに訴求して購買を促したり、コンテンツの力でアップセルやクロスセルにより売上を増やしたりすることができる。
ただし、これは従来からの店舗でのデジタルサイネージによる販促利用にほかならない。
 
では、さらに売上アップにつながるサイネージにするにはどうすればよいのか。
パンデミックにより否応なしに加速したオンラインでの購買行動だが、特にアパレルをはじめとして、顧客がオフラインで購入したい商品が完全にオンラインへ移行することは難しい。
オンラインからオフライン(店頭)へと回帰させ、店頭でこそできるマーケティングを行い、さらに市場を拡張させる方法——それは、今度は逆にオフラインからオンラインへと誘導し、その過程でユーザーをカスタマーへと進化させることである。店舗でのサイネージを起点として、拡張された世界へと顧客を誘い、売上につながる体験をもたらすのだ。
 
具体的には、デジタルサイネージ上におすすめ商品とともにQRコードを表示し、店舗にないサイズや色などをECサイトから購入できるようにする。さらに、その在庫情報をリアルタイムにサイネージへ表示することで、オンラインでの購買を促すことができる。また「割引券はオンラインで!」と促し、店内や店頭で顧客自らがスマホで割引券をオンラインから取得する際に会員登録を条件として顧客化し、そこで得た属性や購買履歴などの情報をもとに、さらにOne to Oneマーケティングへと進化させる。
これは単なる一時的な顧客獲得ではなく、長期的なリピーター育成を意識したマーケティングであり、安定的な売上確保へとつながる。
 
世界中のインターネットユーザーの約51%が購入前にブランドやサービスを調べると言われており、利用媒体は多い順に検索エンジン、SNS、カスタマーレビューとなっている。
自身に置き換えてみれば自明のことだが、オンラインなくしてオフラインの行動もない。さらに、オフラインとオンラインを行き来する、シームレスにつながった顧客体験の向上こそが、顧客増・売上増の鍵となる。
 
店舗でのタッチポイントとしてのデジタルサイネージの役割は、今や非常に重要なものとなっている。活用方法次第で、お客様とのコミュニケーションや販促効果を劇的に変えることができる。まさに「なんとかとハサミは使いよう」——デジタルサイネージは使いこなせば店舗運営の強力な武器となるのである。
(H.I.)