カタール、ドーハのハマド国際空港のデジタルサイネージ
中東有数の新世代空港ハマド国際空港のデジタルサイネージは、空港施設のブランド化・旅客体験強化・販売促進・広告ビジネス等を目的として、積極的に導入されている印象だ。ユニークなものもあり、そのいくつかを紹介する。
11月上旬にカタールの首都ドーハにあるハマド国際空港に立ち寄った。空港格付け会社Skytrax「World’s Best Airport」で3年連続世界1位、「World’s Best Airport Shopping」部門でも1位を獲得したことがあり、設備・接客・小売・体験価値すべてで世界最高レベルと評価されている空港だ。
 
1.2 km の大型LEDリボンサイネージ
通路の上の階の壁面部分などには、リボン型(帯状)のLEDサイネージがあり、公開されている情報によると、推定高さ1mで長さは驚くことに1.2kmに及ぶという。2.9mmピッチの屋内用LEDを用い、総ピクセル数は約1億6,900万に達する。映像のテーマには「植物・動物・砂漠の砂・ミラージュ・カタールの文化」といった演出が含まれており、旅客の“体験価値”を高める演出型サイネージの典型と言えよう。映像制作(Moment Factory)・システム統合(Electrosonic・Smart Monkeys)という形で、コンテンツ制作・ハードウェア・CMSまで包括的に運営されているようだ。

 
大型透明メディアファサード「MEDIAMESH」
空港ターミナル内のファサードには、金属ワイヤーメッシュとLEDモジュールを組み合わせた透明メディアファサードである GKD社の『MEDIAMESH®』が4面設置されており、各面おおよそ240m²、総面積約975m²を誇る大規模な映像媒体だ。動画広告や情報コンテンツなどを放映していた。ピクセルピッチは約50mmとのことで比較的粗いのが気になったが、遠距離視認・建築的な一体設計を目的としたものだ。

 
コンビニ風小売り店舗のサイネージ
ハマド国際空港では、「Day2Day Essentials」、「Day2Day Eats」、「Qatar Duty Free Express Shop」など、生活必需品・飲料・軽食・手軽な免税品・トラベルグッズなどを扱う小規模店舗がコンコース全域に20店ほど配置されている。これらの店舗には、空港全体のデジタル施策と連動した店頭サイネージが標準化されており、空間演出としてのサイネージとは異なる、“購買行動を促進するための実務的サイネージ”として位置づけられている。
店頭ファサードにはLEDサイネージが組み込まれ、商品棚上の小型サイネージと連動してロゴ、商品写真、店舗カテゴリーなどがダイナミックに切り替わり、プロモーション、季節キャンペーン、価格訴求などがリアルタイムで更新される仕組みになっている。

 
飲食店のデジタルサイネージ
オレオカフェ:アメリカ国外で世界初となる常設のオレオカフェで、サイネージでは、巨大オレオが空港内や屋外を動く楽しいコラボ動画が流されていた。
KFC:円柱型のサイネージでは美味しそうに商品を訴求していたが、設置されていたのは店頭ではなく、店舗誘導に繋がる店舗に近い場所だった。店舗内には5面のLCDサイネージとタッチパネル形式のオーダー用サイネージがあった。
ラ・ブリオッシュ・ドレ:店内受付カウンター上には、日本では筆者は見たことがない6面ものLCDサイネージに商品メニューが表示してあった。
スターバックスコーヒー:日本ではSHIBUYA TSUTAYA 2F店くらいにしか目にしない(筆者推定)、縦長LCDによるデジタルメニューボードが5面採用されていた。商品+価格のアラビア語と英語の切り替え表示のほか、シズル感のあるイメージ動画も放映していた。

 
そのほか、ブランド店舗にはもちろん、至る所に縦長LEDやLCD、円柱型LED、四角柱型LEDなどがあり、広告表示もされていた。OOH広告視点で見ると、この空港のデジタルサイネージ媒体は、世界主要ハブ空港と同様に「数百万円〜数千万円単位の高額投資を前提とするグローバルブランド向け空港媒体」と言えるようだ。

 
全体を通して、屋内でもLEDが多く使われていることがわかるが、以前取り上げた韓国ソウルと同じだ。LED普及のトレンドはここでも見られた。
(K.Y.)