DSC EXPRESS
Vol.208

DSC EXPRESS Vol.208をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞよろしくお願いいたします。

  • 街が話しかける広告
    ― ロンドンに見るDOOHの新しい文脈設計

    ロンドンで実施されたBritish Airways「Look Up」キャンペーンは、上空を飛ぶ航空機データと連動し、通行人が見上げる瞬間に便名や目的地をリアルタイム表示するDCO事例。天候・時間帯など街の“文脈”を読み取り、広告が都市と人の行動に寄り添う体験を生んだ。文脈設計が、DOOHの鍵となった事例を紹介する。

     
     ロンドン中心部のデジタルサイネージが、ただ視認される広告媒体から「街の空気を映すスクリーン」へと変化を遂げている。たとえば、通りを歩く人が空を見上げた瞬間に、広告がその視線に呼応する――そんな体験が、英国の街角で現実となった。
    この変化のキーとなるのが「リアルタイムで状況に反応する広告」=DCO(Dynamic Creative Optimisation)である。
    一例として、British Airwaysがロンドンで展開した「Look Up」キャンペーンをご紹介する。

     
     英国において、デジタルOOHの導入率は高く、かつプログラマティック配信やデータ駆動型クリエイティブが加速している。JCDecaux UKはこの文脈の中で、天候・時間帯・飛行機の飛行情報などのリアルタイムデータとDOOHを結びつけ、“その瞬間にふさわしい広告”を都市に配信する仕組みを築いた。
    この企画では、従来のターゲティング型広告から一歩進み、シーン・文脈を最適化する広告設計が求められる。

     
     2013年11月からロンドン・ピカデリーサーカスやチズウィック付近で開始されたこのキャンペーンでは、広告掲出面に設置された特定のアンテナが上空を飛行するBA便のデータを取得し、「今この飛行機が上を飛んでいます」というメッセージをリアルタイムで表示した。(dailydooh.com)
    例えば「Flight BA475 from Barcelona」という表示とともに、画面内の子どもが空を見上げて指をさす映像が同期する。広告を見た人は思わず空を仰ぎ、飛行機を目で追う――そんな瞬間が街中で生まれた。
    この仕組みの裏側には、飛行機のトランスポンダー情報、クラウドカバー(雲の状況)、視認可能性判定など複数のデータフィードがリアルタイムに働いていたという。(キャンペーンアジア)

     
     このキャンペーンは、単に「技術を使った派手な広告」ではない。むしろ、都市環境・人々の視線・その瞬間の空気を読み取り、それを「広告として語りかける」デザインだった。
    DOOHにおけるDCOは、データ自動化ではなく「街のリズム」と「人の行動」の結びつきをどう設計するかという問いである。
    こうした設計を通じて、OOHは人を“ターゲット”としてではなく、“共振”をもたらす媒体として再定義されつつある。

     
     日本でも、天候・人流・交通データなどと連動するDOOHが始まっているが、本格的な「文脈に沿った瞬間最適化」はこれからが本番だ。
    例えば、雨上がりの夕方、通勤者の視線が改札から出た先のバス停へと移る瞬間に――その文脈を掴み、適切なメッセージを放つ。
    ロンドンの事例は、その未来の形を静かに提示している。街と広告が対話を始める時、DOOHは広告媒体という枠を超え、都市の“コミュニケーションインフラ”としての新しい役割を担うだろう。
    (Y.T.)

     



    出典:
    British Airways “Look Up” Campaign (UK) – ADsoftheWorld, Nov 2013. (adsoftheworld.com)
    Digital Tripathi “British Airways Look Up Digital Billboard in Piccadilly Circus, London” (Digital Tripathi)
    CampaignAsia “The making of British Airways ‘The magic of flying’” (キャンペーンアジア)


     

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