デジタルサイネージの学び方
~エントリーユーザーの皆さまへ~
何を今さら、というテーマではありますが、毎年6月に幕張メッセで開催されている「デジタルサイネージジャパン」では会期中初日に全セミナーの冒頭で「デジタルサイネージ入門セミナー」を実施しており、毎回立ち見も含む多くの来場者が聴講しています。またDSCが会員向けに行うアンケートでも「デジタルサイネージビジネスを体系的に学びたい」というニーズが少なくありません。そこで本号ではあくまでも筆者の私見ではありますが、「今さら聞けないデジタルサイネージの学び方」についてその入り口のお話しをしたいと思います。
「デジタルサイネージ」はニッチな分野ではあるが、そのビジネスに関わるプレイヤーの立場は①ユーザーとして設置を検討、②ベンダーとして導入を提案、③ディスプレイ・配信システム・センサー・ロケーションビジネス・AI等の周辺技術・ソリューションを販売、④メディアとして広告を販売等々、多岐にわたっている。また技術的にも用途的にも日々、成長・拡大を続けているため、新たに異業種から参入するプレイヤーや自社の新規ビジネスの一環として担当する初心者も多い。以下にサイネージビジネスを俯瞰して、意識すべき学びのポイントを2点、ご紹介したい。
1.用途(ビジネスモデル)とロケーション(ターゲット)を把握する。
デジタルサイネージを構成している要素は大別すると「ディスプレイ」、「配信システム」とそれらの周辺機器である。各分野で高性能化・ローコスト化が進み、また新たなテクノロジーを日々取り込んでいるため選択肢は拡大しているが、その用途とロケーションに大きな変化は無い。そこで最初にサイネージが①誰に向けて②何のために活用されるべきか?を把握することが、導入するためにも提案するためにもまた販売するためにも最初におさえるべきポイントであると言える。
「デジタルサイネージ2020」(2016年:東急エージェンシー刊)より
この「用途とロケーションを明確にする」ことにより、必要とされるディスプレイのサイズや性能、システムの使い勝手や追加すべき機能等が決まってくるため、失敗しにくく余分な機能や過剰なスペックを省いた適切な導入が実現できる。もちろん提案する側もこの点を踏まえてユーザーの立場に立った提案をすべきであることは言うまでもない。
2.できるだけ多くの事例を見る。
今や社会インフラの一部となっているデジタルサイネージは日常生活のあらゆる場面で目にすることができる。またネット上でも様々な導入事例が紹介されている。事例の収集はもちろん大切であるが、できれば外出時等に出会ったサイネージを現場で立ち止まってじっくり観察することをお勧めしたい。その際に意識するポイントは以下の3点である。
1)そのロケーションでサイネージが目的としている用途・効果は何か?
2)どのような人々が接触し、どんな反応を示しているか?
3)設置した事業者は意図した目的を達成するためにどんな工夫を施しているか?
あるいは改善点はありそうか?
サイネージ入門のために最初に意識すべきポイントをご紹介したが、サイネージビジネスに関わるナレッジやノウハウは非常に幅広い。代表的な入門書として少し古い書籍だが本連載を執筆しているDSCマーケシング・ラボ部会が2016年に発行した「デジタルサイネージ2020」をご紹介したい。もちろん事例やトレンドは当時のものだが、短時間で体系的に基礎知識を理解するためにはとても役立つと思う。またその時々のトレンドや最新技術をとらえるためにはDSCサイトに掲載されている過去のデジタルサイネージアワードの入賞作品やこのDSC EXPRESSのバックナンバーをじっくりチェックしてみることも有効だろう。
マーケティング・ラボ部会では会員はもちろん非会員も参加可能な「入門セミナー」を10月後半に実施すべく準備を進めている。このセミナーではテーマを細分化して各分野のプロが説明するほか、終了後に各講師と個別に質疑応答や交流ができるコーナーも設ける予定である。詳細はDSCサイトやMLでご案内するので、エントリーユーザーの方は是非、ご参加いただきたい。
(T.Y.)