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  • 次世代XRバス「The XR RIDE」大阪で始動

    次世代XRバス「The XR RIDE」大阪で始動

    大阪で始まった「The XR RIDE」は、走るバスそのものを舞台にした次世代の観光体験。AR映像やAIガイドを駆使し、街並みをエンタメ空間に変える革新的なXRツアーだ。

     

     2025年7月16日、大阪市内で新しい形の都市観光ツアー「The XR RIDE」が運行を開始した。運営するのは株式会社OUGIで、大阪・関西万博にあわせた「OSAKA Satellite EXPO 2025」の主要コンテンツとして位置づけられている。本企画は、訪日外国人を中心に、最新のXR(クロスリアリティ)技術を用いた没入型体験を提供するものである。 

     
    XRバスの仕組みと特徴

     「The XR RIDE」の最大の特長は、移動するバスそのものがエンターテインメント空間へと変貌する点だ。車両はトヨタ自動車がベースを提供し、インテリアはトヨタ紡織がデザインを担当。前方・側面・天井に配置されたディスプレイには車外風景と連動したAR映像が映し出され、大阪の街並みにキャラクターや解説映像が重ねられる。まるで街全体が舞台装置となり、観光客は没入感のある都市体験を楽しめる。

     さらに、AI音声ガイド「TEMPURA」と人間ガイド「AMI」による二重構成が大きな魅力だ。TEMPURAはAIアバターとして、英語・中国語・日本語(大阪弁)を巧みに使い分け、インタラクティブな会話を展開する。実際には東京のオペレーターが遠隔で操作し、乗客の表情や反応に応じて会話を変化させることで、リアルタイム性のある没入体験を実現している。一方のAMIは現場で柔軟にアドリブを交えつつ進行し、観光客を盛り上げる。両者の掛け合いは、単なるガイドを超えた「ライブエンタメ」に近い。 

     
    プログラムとツアー内容

     第一弾となるプログラムは「The Magic Words ‘OSAKA-BEN’ Bus Tour」である。外国人にとって耳慣れない大阪弁――「なんでやねん」「おおきに」「ぼちぼちでんな」といった言葉をテーマに、観光地案内と組み合わせて体験できる。観光だけでなく言語学習や文化理解も含んだ内容となっており、ツアーそのものが教育的要素も備える点が特徴だ。

     運行ルートは梅田を出発し、中之島や大阪城を巡る約40分のコース。水曜・土曜・日曜祝日の週3日運行で、1日最大4便。定員は9名と少人数に絞り、完全予約制のプレミアム体験として提供される。2025年10月29日まで運行が予定されており、大阪市の観光施策とも連携してプロモーションが行われる。 

     
    体験レポートと印象

     筆者が体験した限りでは、XRによる映像演出や音響の迫力はもちろんだが、それ以上に「参加型エンターテインメント」としての完成度が際立っていた。乗客は単なる受動的な観客ではなく、ガイドやAIキャラクターと一緒にツアーを進める「共演者」として巻き込まれる。ときにはコメディショーや漫才に近い笑いが生まれ、従来の観光バスとはまったく異なる体験が提供されている。

     特に、ツアーの最後に展開されるXR演出は圧巻だ。天井ディスプレイを含めた全方位からの演出により、これまで現実と重なっていた街並みが一気に仮想世界へと切り替わる。その劇的な変化は、観光客に強い印象を残す仕掛けとなっている。
     
    前方には80インチクラスのLCD、天井面はLED、窓ガラスにもシート状のLCDが貼られている

     
    車内のカメラを通じてキャラクターと会話ができる

     
    車両は小型のバス

     
    今後の展望

     OUGIは「The XR RIDE」を観光・移動・言語教育を融合させた新しい都市観光モデルとして位置づけており、将来的には他の観光都市にも展開する構想を持っている。車両、設備、ガイド、遠隔アバター操作要員というパッケージを全国各地に持ち込むことで、どこでも一貫した品質の体験を提供できる点は大きな強みだ。

    (Y.E.)

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