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Vol.198

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  • OOH広告業界に今求められること

    図1. アジア太平洋地域におけるDOOH市場の上位国とデジタル化の割合
    (出典:OOH Tokyo Conference 2025 with WOO)

    OOH広告業界に今求められること

    OOH(屋外・交通)広告に占めるサイネージ比率は現状どうなっているのか?世界的に見て日本はどうなのか?それらを伸ばすためにはどうしたら良いのか?OOH広告業界に今、求められることを述べる。

     

     OOH広告業界では、牽引する鉄道媒体社の中で電車内サイネージの面数がギネス世界記録™︎に認定され、オリジナルコンテンツを導入する施策が効果を発揮し、広告需要をさらに拡大させたところや、リテールサイネージでは大幅な設置面数の拡大によって媒体認知が浸透し、広告主の数の増加とともに業種が多様化し、販促だけでなくリーチメディアとしての活用が伸長した事業者も出てきている。

     こういった好調な話題も多いが、OOH広告のうちデジタルサイネージを使ったDOOH(デジタルOOH)広告の割合は世界的に見てまだ低いという指摘がある。

     図1は、2025年2月に行われた「OOH Tokyo Conference 2025 with WOO」で発表されたデータだが、デジタル化の比率(OOH市場に対するDOOH市場の割合)は世界平均で約37%。対してアジア市場3位の日本は21%にとどまっているということだった。アジア最大の市場規模を誇る中国は41%、2位のオーストラリアは80%、4位のサウジアラビアも85%に達するという。
     

    図2.首都圏主要交通媒体社のサイネージ売上構成比の推移(単位:%)
     

     一方、図2は首都圏の主要交通媒体社の広告売上全体に占めるデジタルサイネージ媒体(DOOH)の売上構成比の推移だが、各社とも2021年度から2024年度にかけサイネージ媒体のシェアを伸ばしていることがわかる。WOOで言われた日本平均の21%を超え世界平均の37%に届いているところもある。これらは、各社個別の企業努力の賜物だが、今後このシェアをさらに伸ばすためにはどうしたら良いのだろうか?

     OOH広告の市場規模を拡大するには、広告主に信頼できる定量的な広告価値を示してOOHメディアへの広告出稿を増やしてもらうのが王道だが、そのためには、インターネット広告のようにOOHメディアの視聴動向を数値化し、その効果を把握できる形で示す必要がある。

     OOHの広告価値を可視化するためには、「メジャメント」つまり「共通指標」の策定が必要であるとして、今年、一般社団法人を設立して来年にサービス提供の開始が予定されている「日本版OOHメジャメント標準化検討準備委員会」(DSCもオブザーバーで参加)の動向がポイントとなりそうだ。

     また、この分野での国際業界団体であるWOO(The World Out of Home Organization)のトム・ゴダード会長は「WOOの経験則では、業界全体が成長することは個別の成長を追求するよりも個々の企業にとって5倍の利益をもたらす。業界全体の協力こそが成長の大きな推進力となる」とコメントしていたが、デジタルサイネージをとりまくDOOH市場では、今まさに標準化された指標に軸足を置いた同業種・異業種間の連携が急速に進展しつつある。「競争から共創へのシフト」を進める各社の動向には引き続き注目していきたい。
    (K.Y.)

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