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Vol.175

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  • 地方における電車車内デジタルサイネージの課題

    地方における電車車内デジタルサイネージの課題

    電車車内サイネージの新規導入及び増設は、以前から首都圏以外の鉄道会社にとって非常に高いハードルになっていることを関係者の皆さんはよくご存じのことだと思う。
    今回は、そのハードルに立ち向かい独自のシステムを導入した京阪電鉄の事例をご紹介する。

     西日本鉄道でも関東仕様の車内サイネージ(媒体名:9000形車内ビジョン)を導入はしたもののオフラインでの運用を続けており、運用面、コンテンツの更新作業、将来的な新規増設の面で課題を抱えている。

     この課題に対して先日も車内サイネージのシステムを持つ数社と意見交換をさせていただく機会があったが、中でも京阪電鉄が導入しているシステムが、導入コストも含め非常に興味深いものであった。

     この独自のシステムは、2020年の秋には試験運用を開始し、2021年4月からは広告媒体としての運用をスタート、27編成(2023年4月1日現在)の車両に同サイネージが搭載されている。

     計画時のコンセプトは、以下の7点だそうだ。

     ①コストが安いこと
     ②ネット接続によってコンテンツ配信が可能なこと
     ③配信システムの運用が容易で、時間帯・日にち・車両別に運用可能なこと
     ④停車駅単位でのエリア別配信が可能なこと
     ⑤将来的に外部サーバーとの連携が可能なこと(拡張性)
     ⑥業務案内システムとは独立した運用とすること
     ⑦後付けの設備として設置が可能なこと

     このシステムの仕様は、交通電業社製のLTE対応の車内サイネージで、1車両毎に通信用の親機が1台と子機2台の計3台で構成されている。親機が4G LTE回線を用いてモバイルクリエイトの配信システムと接続し、サーバーから映像コンテンツを取得。同一車両内の子機には車内無線LANを介して映像コンテンツを送信する。また、案内表示装置が持つ車両の位置情報等を活用することで、大阪・京都など特定のエリアに限定して広告コンテンツを放映することが可能となっている。

     京阪線は大阪と京都という趣の異なる大都市を路線の両サイドに持っていることから、単に同じコンテンツを流すのではなく、エリア別のコンテンツ放映も可能にすることで差別化を図ることが可能になり、沿線需要の取り込みに貢献しているとのことだ。

     折しも媒体の販売開始とコロナ禍が重なり、厳しいスタートになったようだが、市場の回復基調とともに2024年度に入ってからは、稼働率も順調に上がってきているようだ。

     福岡から見ると羨ましい限りだが、デジタル化全盛の中で高機能かつ廉価で拡張性のあるこの独自の車内サイネージが首都圏以外の各事業社の突破口になることを期待したい。

     こちらのシステムにご興味を持たれた方は、下記サイトもご参照いただきたい。

    (K.O.)

    【参考URL】
    http://www.keihan-ag.co.jp
    https://www.parasign.co.jp/products/888/

    【取材協力】
    (株)京阪エージェンシー 、(株)交通電業社

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