交通広告の特徴や効果的なポイントをまとめた
「TRANSIT AD THEORY」
交通広告を理解するのに必要なポイントをまとめた「トランジットアド理論」というものを独自に考えてみた。英語でTRANSIT AD(advertising)とは交通広告のことだが、それぞれの頭文字から始まる言葉で表現している。
T=TALENT
広告には多くのタレント・俳優・モデル・キャラクターが使われるが、他の媒体に比べて圧倒的に大きく表現することが可能で、その訴求力を発揮しやすい。特に駅の媒体で、等身大、さらにそれより巨大な顔が掲出してあったら、多くの人々の視線を釘付けにするに違いない。
R=RECENCY
リーセンシー効果とは、直前に触れた広告が購買に影響を与えるというマーケティング上の考え方だ。購買直前に情報を得ると頭の中の想起イメージが強化され、ブランド選択支援に有利な状況を作るというわけだ。リテールメディアは最強だが、店舗に比較的近い場所にある交通広告もこの効果を発揮しやすい。
A=AUDIENCE
コロナ禍から回復した中、人流も戻ってきて鉄道利用者中心に多くの人々が交通広告のAUDIENCEとなり得る。2023年度の関東地区の旅客数量は1日平均約3,980万人(出典:鉄道輸送統計年報)にもなるし、2022年の新宿駅全体における1日の平均乗降客数は、2,704,703人で、世界で最も利用者数の多い鉄道駅としてギネス世界記録に認定されたほどだ。特にデジタルサイネージ媒体は、テレビCMのマス媒体の補完として良く使われる。また、イベントプロモーション時には、移動する生活者を立ち止まらせ観客とさせることも可能だ。
N=NEWS・NET
NEWS(話題)を喚起し、他のメディアやSNSへの情報拡散を狙って使われることも多い。特に広告自体をスマートフォンで撮影させて、SNSへ情報拡散を狙う「フォトスポット(撮影場所)」とさせる手法が話題換気型のプロモーションとして定着している。特に人気アイドルや漫画・アニメ・ゲームのキャラクターを使った場合、それぞれにコアなファンがいるだけに撮影されやすく情報拡散も多くなりがちで、その効果を発揮しやすい。スマホを介してNET(自社サイト)へ誘導することもよく行われる。その場合、QRコードがデファクトスタンダードとして使われている。
S=SIZZLES
SIZZLESとは、肉が調理される際の音「ジュージュー」を表す「sizzle」に由来し、画面越し、印刷物でも商品やシーンを臨場感たっぷりに伝える意味で用いられる。交通広告では、リアル媒体であるが故、時に本物の素材、すなわち究極のシズル感のある表現ができるのも強みだ。商品パッケージを添付したステッカー広告や、デニム素材、Tシャツ・ポロシャツ、羽毛布団など商品そのものを使った中づり広告などの実施事例もある。
I=IMPACT・IMMERSIVE
交通媒体が他のメディアと一番違うのは、広告サイズを大きく、集中的に訴求できるところだろう。巨大展開、ジャック展開、3D展開などでインパクトやIMMERSIVE(没入感)を与え、アテンションを獲得させやすい。
T=TIMELY
その時、その場所の生活者インサイトに合わせた、タイムリーな表現もできる。例えば、デオドラント・制汗剤商品の広告では暑い季節に通勤時、電車内にいる人々に対して、電車内で吊り革につかまるシーンに「混雑時、ひらくワキにご注意ください」とした表現で訴求するやり方だ。その日の紫外線、花粉の量など媒体周辺の気象情報などを、指数という形で可視化して表現を作成、サイネージに放映するケースもある。
A=ALLIANCE
駅の改札口や駅名表示に広告主や商品の名前が入ったり、電鉄会社が周年で特別な車体の電車を走らせる時に、車体の色に関連する商品のロゴを掲出したりするケースなど鉄道事業者とのアライアンス(提携)が行われている。広告視認者数を測定するケースでは、スマートフォン利用者の位置情報から推計する技術を持つデジタル事業者との提携も盛んで、このメジャメントでは、従来ライバル関係にある広告事業者同士での連携も行われている。
D=DIGITAL
交通広告の中で、デジタルサイネージの存在感が高まる中、メジャメントが進み、配信システムの進化によるDSP・SSPの導入で、将来的にはデジタル広告と連携する可能性が出てきている。広告的にも「街に出たインターネット」が現実化するに違いない。
このように交通広告のポイントを「TRANSIT AD」それぞれの頭文字から始まる言葉で表現してみたが、「TALENTを大きく見せた交通広告は、IMPACTもあるし、ファンに撮影されNETにもアップされNEWS(話題)となりやすい」など、複数のポイントが合わさり、相乗効果を発揮することも多い。
(K.Y.)