デジタルサイネージ業界にもたらす日本eスポーツの
市場価値について
eスポーツの急成長により、プロゲーマーの認知度向上や大型大会の開催が進む中、競技に不可欠なディスプレイや映像設備市場の拡大が期待される。
「eスポーツ」という言葉は日本文化にまだ浸透しているとは言い難く、世代によってはあまり馴染みのない方も多いだろう。eスポーツビジネスの発祥地とされる韓国では、すでに20年以上の歴史があり大きな市場が形成されている。一方日本ではここ数年でようやく法整備が進み、高額な賞金を提供するゲーム大会が開催可能となり、同時に「プロゲーマー」という職業も若い世代を中心に認知され始めている。日本におけるeスポーツ業界は、現在急成長中のベンチャー産業のひとつと言える。
昨年6月、千葉市で開催されたPCゲーム『VALORANT』の日本初の国際大会では、残念ながら日本代表チームの参戦は叶わなかったものの、約4万人の来場者を記録し、インターネット配信の平均視聴者数は約34万人に達した。この結果からも日本のeスポーツコミュニティの熱気の高さをうかがえる。また、大会期間中には千葉都市モノレールが大会仕様にラッピングされた車両を運行し、東京タワーは大会カラーの紫にライトアップされた。さらに、東京タワーのそばで行われたドローンショーは、自治体や企業の積極的な取り組みを象徴するものであった。
▲大会仕様にラッピングされたモノレール 出典:Instagram 千葉モノレール【公式】
▲大会カラーの紫にライトアップされた東京タワーとドローンショーによるロゴマーク演出 出典:株式会社レッドクリフ
PCゲームの大会では、選手がそれぞれのPCに向かい戦うため、観客が選手のPC画面を直接見ることは現実的ではない。そのため、会場には試合中の選手のPC画面をリアルタイムに映し出すLEDビジョンが何台も設置され、大きな会場のどの席からも試合の様子を確認できる。この巨大ビジョンは戦況を伝えるだけでなく、会場ならではの臨場感や没入感を強化し、観客の興奮を一層高める重要な役割を果たしている。またデジタルサイネージは各所で案内等にも利用され、観客の利便性を高めている。
今年7月、国際オリンピック委員会(IOC)は、eスポーツ国際大会「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ(Olympic Esports Games, OEG)」を新設し、2025年に第1回大会をサウジアラビアで開催することを発表した。これにより、eスポーツがスポーツの一分野として認知され、オリンピック正式種目の採用にも注目が集まっている。とはいえ、グラウンドやシューズがあればできる従来のスポーツとは異なり、eスポーツにはディスプレイやビジョン、さらにはそれを動かすシステムが必要不可欠であり、相応の設備が求められる。今後、学校や自治体を中心にeスポーツ施設の拡充が進むと予想される。これから開催されるさまざまなeスポーツ大会の動向を注意深く観察し、ビジネスチャンスを模索することは新たな市場への参入の好機となるだろう。
(Y.T.)