DSC EXPRESS
Vol.159

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  • DOOHの広告メディアで進む、オリジナル動画コンテンツ導入の動き

    「TRAIN TV」のオリジナル番組一覧 出典:TRAIN TV Webサイト

    DOOHの広告メディアで進む、
    オリジナル動画コンテンツ導入の動き

    DOOHの広告メディアには、他のメディアと違って番組や記事といった独自の動画コンテンツは少なかった。それを弱点と見なす向きもあったが、それが大きく生まれ変わり始めている。

     JR東日本の電車内サイネージで放映している内容がこの4月から大幅に変わった。約5万面を対象とする新たな番組配信プラットフォーム「TRAIN TV」を導入。それまで広告が中心だったが、全体の6割強を番組コンテンツに充てるという大胆な改革を行なった。人気のYouTuberや芸人、タレント、俳優などが多数出演し、「いまだけ ここだけ 電車だけ」をスローガンに、1分程度で音声無しのオリジナル番組を配信している。開局1カ月での調査では、山手線利用者の49.0%が認知し、そのうち64.9%は車内サイネージを以前よりも見ていた。「電車に乗っている時間が楽しくなる・有意義になる」で「そう思う」「まあそう思う」と答えた人が65.3%にのぼるなど、メディア価値を上げる結果が出ていることがわかった。

    週ごとにSNSで公開される「TRAIN TV」のオリジナル番組一覧 出典:公式SNS(X)

    タクシーメディアやインストアメディアでもオリジナル動画コンテンツ

     タクシーメディア「TOKYO PRIME」も、タクシー内新番組「ひみつのPRIME」を、4月より放映を開始した。メインキャラクターであるMEGUMIさんの声の「ラヴィさん」と、月毎に変わるゲストが対談する1分間の「ナイショ話情報番組」である。いま気になっている、人には教えたくなかったモノ‧コトについてこっそり教え合い、いいオトナになるヒントをお届けするというものだ。

     「THE TOKYO TAXI VISION GROWTH」も移動時間の情報番組「HEADLIGHT」の放映を行なっている。これは「知る、買う、出かける。新体験ぞくぞく。」をコンセプトに、知っておくとためになる情報を提供する番組だ。

     「TRAIN TV」以前から番組的動画コンテンツを実施しているDOOHメディアがある。それはインストアメディア「FamilyMartVision」だ。商品・サービスの広告のほか、映画・音楽情報、風景、動物・ペット、クイズ、クーポン等、様々なコンテンツを音声付きで放映。狙いは「店舗のメディア化」を標榜している。消費者と直接つながる店舗を「メディア」と捉え、顧客に刺さる情報を発信して集客し、商品の売り上げ増を図るという。実際、2022年5月からシンガーソングライターらによる、アコースティック・セッションユニット「ぷらそにか」によるオリジナル番組の動画配信を実施した時は、ネット上では店舗の情報や動画のコメントがあふれ、ファン同士の情報共有が進み、若者たちが店舗に通ったという成功事例も出ている。

     屋外の大型ビジョンでも、情報番組ではないが、「クロス新宿ビジョン」の「新宿東口の猫の猫ちゃんねる」を筆頭に、各地に3D動画というコンテンツが登場している。

     このように、OOHのデジタルサイネージで、オリジナル動画コンテンツが続々と生まれている。OOHの広告メディアには、従来他のメディアと違って報道・制作・編集といった部門はなく、「いわゆるマスメディアのようなメディアとは言えない」とそれを弱点と見なす向きもあった。番組や記事といった独自制作のコンテンツは少なく、外部調達によるニュースや天気予報が鉄板コンテンツと言われていた。その状況が大きく生まれ変わりそうだ。オリジナルコンテンツがメディア自体の価値を上げ、真のメディアとしてDOOHメディア全体が再評価される新たなトレンドが始まろうとしている。
    (K.Y.)

    「TOKYO PRIME」、「THE TOKYO TAXI VISION GROWTH」、「クロス新宿ビジョン」
    「FamilyMartVision」のオリジナル動画コンテンツ。出典:各社公式サイト

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