バス停デジタルサイネージを盛り上げたい
全国で増え始めている動画も映せるバス停デジタルサイネージを舞台にして、コンテンツ・コンテストを開催し、人材・ベンチャー育成と規制緩和を目指したい。
6月初週、紫陽花が咲き始めて気持ち良い青山通りを散歩していたら、バス停ボックス横の大画面に動画が映っているのを発見した。もう10年近く、バス停のデジタルサイネージ化に注目してきているので、身近にシンボリックな事例を発見して感動すら覚えた。エムシードゥコー社のWebをみると、2023年5月のお知らせに、東京都内で「18箇所22面に増加」と書いてあるので、実は、けっこうメジャーになってきているのかもしれない。
しかし、良く通る青山学院前のバス停にも1年前に設置されていたらしいが、残念ながら、まったく気づかなかった。もともと、路側の大画面に動画が流れると自動車事故の要因になりかねないと、当局が規制していたという話もあるので、静止画中心のコンテンツしか映していなかったのかもしれない。そういえば、3Dサイネージも、なかなか良いコンテンツを製作できずに進化が止まっているように見えるが、せっかくの高精細大画面の表現力を活かせないのは、もどかしい限りだ。バス停の場合には、乗降客の待合空間でもあるため、スマホとの連動サービスの可能性も大きい。
映像製作サイドの問題なのか、メディア業界の特性なのか、企画や営業の力が弱いのか、あるいは法制度や条例による規制が悪いのか。多分、これら全てが要因なのだと推測するが、街中での活動が、思いもよらない円安影響で海外客も大幅に増えて活発化しているのに、今のままでは、デジタルサイネージビジネスそのものが伸び悩んでしまう。
昨秋、バス車内のデジタルサイネージの記事を書いたときには、北海道帯広市の十勝バスの事例を紹介し、「地域と青少年と高齢者の必需品であるバスサービスを、デジタルサイネージでマッシュアップしていく」ことを目指して、コンテストの提案をした。その後、2023年7月~9月に大阪で行われたサイネージ付きバス停の実証事業の成果がユーザーへのアンケート結果とともに報告されている。この中で、動画広告を不快と感じた人の割合は1%程度しかない。現行のサイネージ運用規定では「映像又は光の点滅が1秒間に3回を超えないもの」といった項目があったりするが、こうした規定は、丁寧に、しかし、全面的に刷新すべきだろう。
今回の記事では、東京のど真ん中の話を中心にしたが、地域も東京も、いろいろ苦労している状態であることに差はないことが分かった。改めて、高校生や大学生によるバス停デジタルサイネージのコンテンツ・コンテストの提案をしたい。既に、動画系SNSでは、実に表現力豊かでクリエイティブなコンテンツで溢れている。一方、高専ワイヤレステックコンテスト「WiCON」や高専ロボコンなどでの青少年達の活躍も、どんどんグレードアップしてきている。また、Covid-19で止まってしまった、ファッション・ナイトやディネ・アン・ブランといった街イベントとの連動ができれば、デジタルサイネージビジネスにとってもブレークスルーの良いきっかけになるかもしれない。
エンタメ業界などでも、Covid-19の影響でネット配信の需要が急拡大したことにより、個人やベンチャーを中心に映像製作ビジネスが密かな進化を遂げている。青少年に加えて、こうした新進気鋭の事業者達にとっても、バス停デジタルサイネージのコンテンツ・コンテストは、飛躍のための絶好の舞台となるのではないか。また、細々とした規制を一気に取り払う実証機会としても重要と考える。(N.S.)