DSC EXPRESS
Vol.156

DSC EXPRESS Vol.156をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞ宜しくお願いいたします。

  • マリーナ・プリエトって誰?

    マリーナ・プリエトって誰?

    スペインの地下鉄広告を使ったB-to-B広告の成功例。空き枠を使って交通広告の強みを可視化し、地下鉄広告から離れつつあった多くのブランドを取り戻した。その功労者が実は100歳の高齢女性、というユニークな事例を紹介する。

     JCDecauxスペインが、自社媒体であるマドリード地下鉄広告で実施したキャンペーンを紹介する。

     近年、地下鉄広告への投資が著しく減少しており、2023年は前年度を下回り、-7%となった。JCDecauxでは、屋外広告が効果的であることを今一度コンビンスし、離れていった広告主を取り戻すため、ユニークなキャンペーンを企画した。タイトルは “Meet Marina Prieto” (マリーナ・プリエトに会おう)。

     100歳になる優しい表情のおばあさんが主人公だ。彼女はソーシャルメディアで、自分自身のコンテンツをシェアしており、フォロワー数は28人。

     JCDecauxスペインと広告代理店David Madridは、空き枠となっている地下鉄の広告スペース300か所以上で、彼女のインスタグラムにポスティングされた54の写真を掲出。

     広告をみた人々やメディアが彼女に気づき、語り始め、そして彼女のフォロワーになっていく。キャンペーン一週間でフォロワーは5,000を超え、さらに増え続けて現在10,000以上に。エンゲージメントは13,400%アップ。キャンペーン期間中、仕掛け人であるJCDecauxと広告代理店はあえて名を伏せ、後に多くのマーケッターや企業のリーダーが集まる場で、広告の狙いと効果を発表し、広告主が再び、地下鉄広告に投資するべき根拠を伝えた。結果、多くの企業が地下鉄広告への投資を再開し、JCDecauxにとっては過去最高のブッキングを記録した。

     自社メディアをフル活用して広告投資を増やす、B-to-B施策としては大成功だ。どんなメディアもアイデア次第で化ける。話題が拡散するスピードも規模も、デジタルソリューションの浸透が大きく影響して、こういう結果を導き出した。しかしながら最後に補足すると、そこには人々の心に訴えかける情緒的なメッセージがあったから、という点も忘れてはいけないように思う。

     無名のスペインの高齢女性が、インスタグラムで家族との日常をシェアする。その目的も内容も、シンプルで自然で、ユーモアにあふれている。誰もがそのメッセージに耳を傾け、さらに傾けたいと思った。そこが一番重要で、かつ、最も難しいコミュニケーションのコツかも、と、キャンペーンをみて感じた。

     さて、この作品は2024年カンヌ広告祭にノミネートされており、チタニウム部門のショートリストまで残っている。賞獲得となるか、記事が出た後、確認してみよう。

     おまけ

    (T.Y)

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