市民権を得たサイネージが変えるエンタメ業界の未来
櫻坂46の楽曲にデジタルサイネージという言葉がある。作詞は言わずと知れた秋元康氏だ。日本を代表する人に使われるまでになったのは、市民権を得たとも言えよう。それどころかサイネージは、音楽業界ひいてはエンタメ業界の未来を変える存在にまでなっている。
デジタルサイネージが使われているのは櫻坂46の楽曲「承認欲求「と「魂のLiar」だ。承認欲求では、「街中 溢れるデジタルサイネージ. Oh Oh Oh Oh It's so annoying(以下略)」。魂のLiarでは、「道行く人に素通りされているデジタルサイネージ(以下略)」とある。共通しているのは、サイネージは人に広告や様々な情報を発信する表示装置だが、人がSNS上にメッセージを発信することや歌うことを、その比喩として捉えられている点にある。残念ながら、楽曲中ではうざいもの(annoying)、素通りされる存在として例えられているが、誰もが見たくなる、聴きたくなる存在としてのデジタルサイネージがある。それは、音楽ライブイベントにおけるものだ。
球場や大規模なコンサートホールなどでの使われ方で多いのは、サービスモニターと言うもの。業界では画出し(がだし)とも呼ぶ演出手法で使われる。ステージから遠くにいる観客のために、サイネージを設置してミュージシャンの姿を大きくリアルタイムに映し出すことだ。イメージ映像、メッセージはもとより出演者の心拍数などを表示したり、実写三次元撮影でありえない位置からの姿を見せたりしたこともあった。中には、ステージの床面までサイネージ化したり、自走する複数のサイネージをステージ上で動かしたりする演出もある。それ以外にも、半透明な紗幕スクリーンやウォータースクリーンへの投影、プロジェクションマッピング、ドローンをサイネージ化した例などもある。
音楽ライブではまず音が大切だが、サイネージ(映像)を用いてミュージシャンの音楽の世界観を創出し観客を魅了する需要が高まっている。年々大型化・高精細化が進む中で、ラスベガスにとんでもないものが誕生した。
異次元のサイネージ設備を搭載した施設が誕生
エンターテインメント施設(アリーナ)「The Sphere(スフィア)」。外形はその名の通り球形で、高さ約111.6m、直径約157mで世界最大。外部はほぼ全面LED。内部は120万という数のLEDが1万5000㎡の半円のサイネージに天井まで敷き詰められ、驚異の16K解像度を誇る。9月29日のこけら落としは、U2のライブだった。体験者によると、ここでの画出しはメンバーの大きさは半端なく、迫ってくるようだったという。また、曲によってステージの背景がラスベガスの映像になったり、それが砂漠の街に変化したりした。鮮明な映像に、まるで屋外にいるかのような複合現実(ミックスドリアリティ)体験を全身で感じる事ができ感動したという。運営側は「完全に没入できる映像環境を提供すること」を目指したようだ。SNSでも「非常に壮観(spectacular)」「壮大(Magnificent)」「最もユニーク」「オーディオビジュアルの点で最高の会場」「絶対に大好き」「Amazing」「crazy」「本物より良い」などのポジティブなメッセージが見られた。
まだスタートしたばかりだが、次はロンドンという計画もあるようだ。このような異次元のサイネージ設備を搭載した施設が音楽業界、ひいてはエンターテインメントの未来を変えるのは間違いなさそうだ。(K.Y)
出典:https://www.youtube.com/watch?v=776yP6B2lH0&t=1s