DSC EXPRESS
Vol.124

DSC EXPRESS Vol.124をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。

  • デジタルサイネージの新たな利用目的に「社会課題の解決」を加えるべきである

    デジタルサイネージの新たな利用目的に
    「社会課題の解決」を加えるべきである

    デジタルサイネージの利用目的として、広告、販促、インフォメーション、アンビエント&エンターテインメントに加えて、「社会課題の解決」が加わりつつある。いや違う、加えなければならないのである。

    対面で使う 翻訳対応透明ディスプレイ「VoiceBiz UCDisplay」
     透明なディスプレイを介した状態で対面し、お互いに顔を見ながら会話をして、その内容を自動で翻訳して表示をするのが「VoiceBiz
    UCDisplay」だ。今年の7月10日から西武新宿駅で実証実験を行っている。これは訪日外国人に対するサービスはもちろん、耳が聞こえにくい人や発音に困難がある人のアシストもできる。大事なことは対面であることだ。まさに顔が見えるコミュニケーションは、言うまでもなく重要あり、機械翻訳だけでは伝われないニュアンスをきちんと相手に伝えることができるからだ。この体験はスマホアプリだけでは代替できない点が重要だ

    街の音を可視化する 聴覚障害者向けの「エキマトペ」
     「エキマトペ」は駅のアナウンスや電車の音といったその場の環境音を、文字や手話、「オノマトペ」として視覚的に表現する装置である。オノマトペとは擬音語や擬態語のことで、「ガーン」とか「ビューン」のようなもののこと。聴覚に障害がある人にとっては、情報取得という実用面以上に、街の音を可視化することは生活のライブ感、楽しさに直結する。それは健常者にとっても同様な体験になるのではないだろうか。こうしたエンタメ要素も兼ね備えているといえる。既に実証実験は終了しているが、こうしたサービスこそ継続されるべきではないだろうか。趣旨に賛同する企業が必ず存在し、支持される時代であるはずだ。

    ジェンダーギャップの解消 生理用ナプキンを配布するオイテル
     「オイテル(以下OiTr)」は生理用ナプキンをトイレの個室内で無償提供する事業を行っている。スマホアプリをダウンロードし、トイレ個室内に設置された端末にスマホを近づけると、生理ナプキンが無償で提供されるというサービスである。事業を維持するための費用を広告費で賄うビジネスモデルである。

     トイレというロケーションを媒体化した事例は複数ある。それらとこのOiTrの違いは、前者は広告事業そのものが目的であるのに対して、OiTrは生理用品を配布することでジェンダーギャップを解消し、社会課題を解決するというもの。よってどちらも広告を掲出するという点は同じでも目指しているものが異なる。

     OiTrはデジタルサイネージで広告をただ流すだけでなく、その広告によって生理用品の無料提供を可能にするという付加価値を持つことで、広告主からOiTrのデジタルサイネージ広告に理解を得ている。一方トイレ利用者は広告を見ることで、自分だけでなく生理用品を必要としている他の人々のためにもなっていると認識する。こうした広告主と視聴者が相互に利益を享受できる、バランスの取れた関係が生まれる。このバランスこそが、OiTrのデジタルサイネージの真の意義であり、その特徴なのである。

     現代の日本においては、解決するべき社会課題はいくらでもある。こうした課題に対してデジタルサイネージが貢献できることは何か。そしてそれがビジネスとして回せるかである。今回紹介した事例から見えてくるのは、これまでのようなロケーション価値、リーチ、フリークエンシーといったものとは少し距離をおいたデジタルサイネージの利用が増加していくのは間違いないということだ。本稿で紹介した取り組みが社会的に評価され、企業がそれに賛同することが企業価値や企業評価の向上に繋がる、といった好循環が確立されるといい。(Y.E.)

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