DSC EXPRESS
Vol.122

DSC EXPRESS Vol.122をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。

  • サイネージは「イマーシブメディア」へ~変わるこれからの駅空間~

    ※写真:「上野駅広小路口駅前広場 完成イメージ」JR東日本報道発表資料より

    サイネージは「イマーシブメディア」へ
    ~変わるこれからの駅空間~

    3年間のコロナ禍を経て、「Withコロナ」時代に入ったとも言える昨今、生活者の行動様式やOOH広告のアプローチも大きく変化しました。今号では駅空間におけるサイネージの活用スタイルの新たなトレンドについてご紹介します。

     「2022年日本の広告費(電通/2023年2月24日発表」において、交通広告の前年比は101.0%と全体の伸び率(104.4%)には及ばないものの緩やかな回復基調にある。長期間の外出自粛やテレワーク定着の影響で大きく落ち込んだ都市圏における人流や鉄道利用者数は徐々に戻りつつあり、最近ではコロナ禍でネットワーク系商品(車内メディアやサイネージネットワーク)が苦戦を強いられるなか、各社とも主要駅への大型サイネージの設置に注力し、これらは「インパクト型OOHメディア」として、コロナ禍でも好調な売上を維持する人気媒体となった。代表的な事例としては、JR新宿駅東西自由通路の「新宿ウォール456(幅45.6m)」、大阪メトロ梅田駅に設置された「Umeda Arch Vision(幅40m)」、東急田園都市線渋谷駅の「ビッグサイネージプレミアム(幅25m)」のほか、西鉄福岡(天神)駅の「プレミアムスクリーンTENJIN(幅14m/曲面)」やJR博多駅の「THE HAKATA VISI-ONSTAGE(背面・床面LED)」等々、主要駅に続々と展開されている。
     ハード的なトレンドとしてもLEDモジュールの高精細化・ローコスト化とバリエーション拡大によって、交通広告の分野では緩やかに「液晶からLEDへ」のシフトが進んでいるとも言えるだろう。
     そのような状況下でJR東日本は2023年6月6日に「Beyond Stations 構想 」による新たな駅空間を創造します~「イマーシブなメディア空間」が誕生!~を発表した。Beyond Stations構想とは、同社が2021年に発表した「生活における『豊かさ』を起点として駅のあり方を変革し、駅をつながる『暮らしのプラットフォーム』へと変換」していくプロジェクトで、今回のリリースではその第1弾として、駅を「イマーシブな(没入感のある)メディア空間」とするコンセプトを策定、その中でサイネージは中心的な役割を担っている。
     具体的には上野駅広小路口に3Dコンテンツを意識した形状の大型ビジョンを新設するほか、13番線ホームをプロジェクターなどで演出。秋葉原駅では曲面タイプの大型LEDサイネージを上部に備えたショールーミングスペースを新設。新宿駅では南口改札内の柱をLEDラッピングし、天井部やフロアの一角に大型サイネージを新設する等、それぞれの駅のロケーションを活かしたサイネージが続々とオープンする予定である。
     またJR東日本グループは、2050年度のCO₂排出量「実質ゼロ」を長期目標に掲げており、今回整備する上野駅・秋葉原駅・新宿駅でのメディアは、東京都の「キャップ&トレード制度」などを活用して、「ゼロカーボンメディア」として運用するとしている。これもSDGsを意識した新たな取り組みと言えるだろう。
     サイネージは既に都市景観の一部となっているが、これからの駅空間をどう変えていくか、そこにどのような新たな体験価値が生まれるか、是非、注目したい。(T.Y.)

Copyright c Digital Signage Consortium. All Rights Reserved.