駅構内で拡大する高精細LEDディスプレイのトレンド
~広がるLEDのバリエーション~
皆さまもお気づきのことと思います。最近の各社発表資料や報道・アワード受賞作品等々、各分野でLEDディスプレイの導入事例が急速に増えています。バリエーション・精細度や耐衝撃性能、特にコスト面でここ数年、LEDディスプレイは長足の進歩を遂げています。本号では改めて、ディスプレイデバイスとしてのLEDの可能性が感じられるような最近の駅構内での導入事例をご紹介します。
従来からディスプレイを選定する際に、小型で精細度が要求されるケースでは液晶ディスプレイ、大型で比較的遠くから視認されるものはLEDディスプレイというすみわけがあった。これは主に高精細LEDのコストが高かったことと、液晶ディスプレイを組み合わせて大画面を作るいわゆる「マルチ」で180~240inch程度までは対応できたためである。
ところが最近では屋内の比較的小型(近くで見られる)のサイネージでの導入事例が急増している。
もともと高輝度で防水性能に優れたLEDは屋外の大型ビジョンの分野では定番の素材であった。また精細度の面でも従来の「砲弾型」LEDモジュールは10mmピッチ程度が一般的で屋内で細かい文字や階調を表現するには向いていなかったが、その後SMDタイプ(表面実装型)が普及し、ピッチも4~6㎜が屋外ビジョンの主流になりつつある。最近では屋内用途を想定した高精細で衝撃に強いCOB(チップオンボード)やGOB(グルーオンボード)タイプの登場でLEDの導入事例は屋内にも大きく広がりつつある。フレームのつなぎ目が見えない高精細の大画面を自由なサイズで作れるLEDのメリットは、コストダウンによって駅構内でも導入が急速に進んでいる。
2019年4月に東急渋谷駅地下に設置された幅25mの「ビッグサイネージプレミアム」は駅構内で初めて導入されたCOBタイプ(1.9mmピッチ)のビデオウォールで、屋内における導入事例のベンチマークとなった。その後、2019年12月には大阪メトロが御堂筋線梅田駅ホームに縦4m×横40mの「Umeda Metro Vision」をローンチ、このサイネージは「地下におけるLEDスクリーン最大ディスプレイ」としてギネス世界記録™に公式認定され、大きな話題となった。駅構内ではその後も2021年5月にJR新宿駅に「新宿ウォール456」(1.58mmピッチ/幅45.6m)が登場、LEDビデオウォールはインパクトメディアとして定着したと言える。最近の事例では2023年1月、東京メトロ半蔵門線渋谷駅の柱に超高精細(1.26㎜ピッチ)の「渋谷55ストリートビジョン」が設置され、壁面だけでなく、柱にもロケーションが広がりつつある。
一方、東京圏以外でもこのトレンドは広がっている。2020年8月にはJR西日本コミュニケーションズが大阪駅に「大阪セントラルサウンドビジョン」(縦3m×横11m/ 3.91mm ピッチ)を設置、同ビジョンでは2022年9月から3Dコンテンツとして、ヒョウ「アカツキ」を放映し、SNS等で大きな話題となった。
また2021年10月には西鉄福岡(天神)駅に曲面で幅14.3mの大型LED「プレミアムスクリーンTENJIN」が設置された他、同駅の改札内には2023年2月15日からは駅構内では日本初となる円柱をLEDでラッピングした「TENJIN TREE VISION」が運用を開始した。
事例の詳細は各サイトをご確認いただきたいが、これ以外にも大型バナーとして天井から吊り下げる軽量タイプのもの、スリットタイプでガラスの内側に設置できる透過型のもの等々、バリエーションも拡大している。
超高精細化とコストダウンが今後も続くならば、従来の液晶ディスプレイのサイネージは自由なサイズで防水性や耐久性に優れたLEDディスプレイに徐々にシフトしていくことも充分に想定される。是非、この分野の動向に注目していただきたい。
(T.Y.)