DSC EXPRESS
Vol.095

DSC EXPRESS Vol.095をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。
※今回は10月6日発行となります。

  • 自律型ロボットで広がるデジタルサイネージの近未来

    自律型ロボットで広がるデジタルサイネージの近未来

    沖電気工業、名古屋大学、楽天モバイルが共同で進める協調型自律ネットワークの研究開発において、主に名古屋大学が開発に注力する自律型ロボットが、近未来のデジタルサイネージの世界を魅力的に切り開こうとしている。

     B5G(Beyond 5G)のネットワークを介すると、超高品質映像を複数端末で同時共有したり、カメラやディスプレイを機能分担してプライバシーに配慮しながら協調動作したりできるようになる。マルチメディア機能を有する自律ロボットが、VRやMRによる仮想と現実を融合させた世界観を提供し、特定の街中や、離れた街同士で、全く新しいエンターテイメントを楽しませてくれることになりそうだ。

     今、研究開発されている自律型ロボットとはどういったものだろうか。名古屋大学の河口教授によると「サービスの効率化やリソースの有効活用を自律的に行い、ネットワーク側との連携を可能とするロボット・ネットワーク」という事になる。著名なSFアニメでは、クラウドとの接続を切ったロボット同士が、数体で相談しながら作戦立案していくようなシーンがあるが、まさに、あの世界の実現となる。自律移動、ディスプレイ、カメラ等の基礎的なロボットモジュールの設計開発が行われ、新しいコンセプトとして「MetaPo」が提案されている。

    参考図;MetaPoのコンセプトデザイン

     既存のデジタルサイネージでも、コンテンツを制御するセットトップボックス、ネットワーク、ディスプレイ、そして、モニタリング用のカメラ等で構成されるのが一般的であるが、それらが、全て、自律的に動き回ることができるという事になる。渋谷の真ん中やイベント広場、ショッピングセンター内や路上など、様々なシーンで活躍しそうだ。例えば、沖縄高専では、ビーチで最も目立つペットボトルのごみ回収のために、4輪駆動の小型バギー車にデジタルサイネージを組み合わせたロボットの提案を行っている。これら高専生の提案も、河口先生の開発成果が社会に出れば現実のものとなるし、ビジネスの可能性も大きく膨らむ。

     「30秒後に君の目の前に来るネイビーの帽子の女性。今朝、美味しい日本酒のお店、リクエストしてたよ。オッケー。あのショップの裏にある隠れ家みたいなお店、紹介しようかな。」こんな連携プレイが、街のあちこちで、動き回りながらできるようになる。当然、AIも働くのでプライバシー等の個別事情はしっかり守られ的確に対応されるはずだ。

      今でも、注文をロボットが運んでくれる飲食店が登場しているが、そのロボットが協調型自律ネットワークを装備し、自分の能力はもちろん、自在に制御可能なネット上の他者の能力も獲得しながらサービスをしてくれる、という表現でお判りいただけるだろうか。

     こうした構想は、これまで、業界でも、いろいろと議論されてきているが、特に日本の場合は、プライバシー問題が大きく立ちはだかり進展が芳しくない。サイネージ端末にしろ、繋がっているネットワークやクラウドにしろ、解決の鍵は「Trusted」だと考えられるが、立地地域やコミュニティの考え方や行動規範で進化したAIやそれを装備した協調型自律型のロボット・ネットワークが「Trusted」を提供してくれるようになる事を期待したい。(S.N.)

    参考図;自律型ロボット「MetaPo」による利用シーン

    参考図の出典;Takuro Yonezawa, Nozomi Hayashida, Johanners Przybilla, Yutaro Kyono, Kenta Urano, and Nobuo Kawaguchi: “MetaPo: A Robotic Meta Portal for Interspace Communication”, SIGGRAPH ’22 Posters(2022)

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