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Vol.085

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  • デジタルはアナログアートを昇華させられるか ゴッホと北斎

    デジタルはアナログアートを昇華させられるか
    ~ゴッホと北斎~

    デジタルアートも広義でデジタルサイネージであることがある。デジタルサイネージのすべてが純粋アート作品ではないにせよ、その表現手法においてデジタルアートから学ぶことは少なくはない。そこでいま開催中の参考となる2つのデジタルアート事例を紹介する。

     1つ目は角川武蔵野ミュージアムで開催中の「ファン・ゴッホ ー僕には世界がこう見えるー」だ。この展示は世界各地で開催されていて、筆者は先日ラスベガスとロサンゼルスで見損なったので、こうして日本で体験できるのはとても嬉しい。

     これはゴッホの世界観を映像体験するデジタルアートだ。ゴッホの作品をアニメーションやコラージュでホールの壁4面と床面にプロジェクターで投影する没入型の作品である。

     ここで最初に気になったのがプロジェクターで投影される解像度、輝度、彩度のどれもが期待を下回ることだ。今の技術で膨大な数の高輝度プロジェクターを持ち込まないと無理であることが露呈する。これでは現物の作品を超えられない。

     しかしこれがデジタルの限界ではないはずだ。例えばチームラボのデジタルアートは基本的に本物が存在していない、チームラボのデジタルがオリジナルだ。そのためプロジェクターの暗くて眠たい映像でもデジタルアートとして成立するのではないか。

     会場のプロジェクション(プロジェクションマッピングではなく)環境を見ても、特に鏡の使い方、そのエッジ部分の使い方が雑すぎる。またゴッホの絵画と向き合う時に時間軸を音楽に持っていかれたくはない。これなら日曜美術館のような、いい意味で完全押しつけの完パケコンテンツの方がいい。そして上の写真のようにスマホで撮ると、とてもSNS映えするのは間違いない。SNS映えまで設計するのが今のデジタルアートというなら返す言葉はない。

     もう一つは北斎だ。
     初台のICCで開催中の「[Digital✕北斎特別展] 大鳳凰図転生物語 小布施とHOKUSAI 神妙に達していた絵師」は、アナログアートをデジタルで見事に昇華させた好例だ。北斎の絵図がアートかどうかはともかく、本物の天井絵を超高精細デジタルスキャンし、圧倒的な緻密さと正確さで再現している。その再現方法はディスプレイやプロジェクターではなく、プリント出力というのもとても重要な部分だ。


     入り口正面に展示されているマスターレプリカは垂直に壁にかかっていたので、最初「これは違う」と思った。しかしそれは杞憂だった。奥の空間では岩松院の空間をプロジェクターで再現しながら、水平に天井絵として見上げて見ることができる。これはあくまでも天井絵なのである。ここはものすごく重要なのだ。そしてこちらはマスターレプリカではなく、本来は背景に貼られていただろう金箔を含めて出力している。これに極楽浄土の世界観を再現するプロジェクション映像が加わり、北斎が目指した世界観をデジタルで再現しているのだ。これなら北斎もきっと納得するのではないだろうか。


     これら2つの対象的なデジタルアートの表現手法は、ぜひ両方体験することを強くお薦めしたい。(Y.E.)

    ファン・ゴッホ ー僕には世界がこう見えるー
    2022年6月18日(土)から11月27日(日)角川武蔵野ミュージアム
    *事前予約が必要

    [Digital✕北斎特別展] 大鳳凰図転生物語 小布施とHOKUSAI 神妙に達していた絵師
    2022年6月2日(木)から7月3日(日)の木金土日曜に開催
    NTTインターコミュニケーションセンター ICC
    *事前予約が必要

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