史上空前のOOH広告大量出稿の背後にあった
メジャメントの技術
昨年末に実施された出前館のOOH広告展開は、エム・アール・エス広告調査(株)の出稿金額調査によると、交通広告だけでも10億円近く(定価換算)にもなりOOH広告史上最大規模と言えるものだった。コロナ禍の中、業界では驚異的な出来事と大きな話題になった。振り返ってみると、その実施の背景にはメジャメントの技術があったことに着目した。
出前館の交通広告を中心とした展開は、HIKAKINさんとはじめしゃちょーさんが出演するテレビCMが流用され、首都圏の主要な駅の広告媒体をほとんど実施する駅ジャック展開だった。既存顧客を狙うリターゲティング広告を減らし、テレビCMと交通広告へ投資。新規顧客獲得を狙う施策がその前のキャンペーンで成功。交通広告は、加盟店が駅周辺に多く、営業で「今日、駅の広告を見てください」と言うことをトークスクリプトに入れたところ獲得が増えたという実績も今回の実施理由の一つだったに違いない。それだけでなく、駅メディアを中心に実施したのは、車両メディアと比べてアクチャルデータが計測しやすかったからという。
ここで注目すべきは、そのデータはLocation Mind社が提供する位置情報データの時間軸での移動状況を精査したものを使ったという点だ。東大発の位置情報AIベンチャーである同社は既存の人流マーケティング・ツールにはない、「鉄道利用に特化した人流データ」の提供を実現しているとのこと。詳細は非公開だが史上空前のOOH広告大量出稿の背後には、このメジャメント技術があったとも言えるだろう。
CMのキャラクターでYouTuberのHIKAKINさん自らも、このOOH広告展開をチャンネル登録者数1070万人の「HikakinTV」でレポートした。
https://www.youtube.com/embed/H5yJ7Cetp7w
この動画の再生回数は155万回を超え、「もう看板が観光名所ってくらい何度も見に行って写真撮ってます」「毎朝駅で見れてテンション上がってます‼︎」「街が明るく元気になりますね♪」など多くの好意的なコメントも見られた。圧倒的にリアルな空間を広告で埋め尽くしたOOH広告展開が、話題の起点となり情報拡散を生み、多くの人々に伝わった事もわかるだろう。
前回のDSC EXPRESS Vol.082で「交通広告におけるメジャメントガイドライン【第1版】公開」の記事があったが、広告主によっては既に独自にデータ活用を行いOOH広告へ積極投資を行ったところもあるのである。今後、メジャメントが一般化しOOHメディアの価値の可視化が普及し、その認識が広がれば、出前館のような広告主も増えOOH広告の需要も拡大していくことが期待されるだろう。(K.Y.)