とても身近(至近距離)になった
大型デジタルサイネージ
屋外の壁面や球場のオーロラビジョンなどでよく使われているLEDビジョンだが、最近は画面に触れられるほどの至近距離に設置されることも増えてきた。技術の進化に伴う普及の要因を、2つの視点から解説したい。
2019年4月東急田園都市線渋谷駅改札外のコンコースに、沢山の人々が往来していて画面に触ることのできる場所に設置された高さ約2m×幅約25mの巨大なLEDユニットで構成されたデジタルサイネージが登場して以来、公共空間でのLEDパネルの活用が進んでいる。
背景としては、大きく2つの進化が大きく影響している。
①LEDパネルの耐久性の向上
②LEDパネルの高精細化・低価格化
である。
①の高精細LEDパネルの耐久性の向上については、SMDパネルが主流だったLEDパネルにCOB(Chip On Board)パネルの選択肢が加わった事で、SMDパネルにおけるはんだ付けで脆かった構造上の欠点を補う事が出来た。PDC社のCOBパネルとSMDパネルのスラストテストにおいてCOBパネルが耐えられるスラストは5倍以上の結果が出ているという。
また、同社のCOBパネルはPCB表面全体がシリコンで覆われているのでLEDパネル表面の防水(IP65)が確保されている事、難燃性能としては最高レベルのUL94-5VAの認証試験に合格しており、駅構内のような防水性能や防火性能も要求されるような設置環境リスクの高い場所において、清掃のしやすさ等と合わせて敷居が下がった事が大きく貢献している。
一方、SMDパネルもGOB (Glue On Board)化という進化をとげており、通常のSMDパネルに対して樹脂コーティングの表面保護を施し、耐衝撃性、表示面防水性、防塵性を高めたLEDパネルが登場している。GOBパネルは強度が非常に上がるため、人が載る様な床面にも設置することも可能となっている。
②LEDパネルの高精細化については、1ミリピッチ台のLEDパネルをソニー社が開発したCrystal LEDが2017年頃に登場したことを皮切りに市場に導入されはじめたが、当時はLEDパネルの取り扱いの繊細さや価格等の条件面から、公共空間の様な「気軽に人が触ることが出来る場所」での設置が難しい状況だった。
前述のLEDパネルの耐久性問題に解決の糸口が見えてきた事に合わせて、至近距離(1m以内)で人に見せる場合の表示品質、すなわちLEDパネルの高精細化についてもCOBタイプのLEDパネルを筆頭に1ミリピッチ台からそれ以下の超高精細LEDパネルも登場したことによって、従来の大型ポスターや大型シート出力等の印刷物に肉薄する表示が実現可能となった。
特にCOBの様なLED素子を直接基板(PCB基板)の上に実装する技術は、1ミリ以下のピッチへの対応やLEDパネルの量産(→低価格化)に向いている技術と言える。
ネットに掲載されていた最近の掲出事例ではANYCOLOR株式会社が運営するVtuberが前述の大型デジタルサイネージに登場し、多くのファンが詰めかけSNS等にも取り上げられ大反響の事例となった事からも読み取れるように、現実空間にアニメのキャラクター(Vtuber)が現実に出現したと信じ、感じる(られる)ことが出来るくらい、映像に目の肥えた熱狂的なファンも満足できるLEDパネルの表現・表示品質になってきているという事を示しているのではないだろうか。(N.Y)