DSC EXPRESS Vol.072をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。
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もう街に人は戻らない
2022年からのデジタルサイネージ
Covid-19によるパンデミックによって明確になったことは、デジタルサイネージは、ロケーションバリューからコミュニケーションバリューへの変革が急務であることだ。
こうした視点で2022年からのデジタルサイネージの向かうべき方向性を考えてみる。
2021年にデジタルサイネージコンソーシアムがガイドラインを策定している。今後は広告主や広告会社、関連する他の団体と連携した指標を提示することは社会的責務であり、そのための活動も着実に進んでいく。
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センシングしてアナライズしてビジュアライズするという流れがこれからも重要だ。しかし、非接触検温や3密回避のような踏み絵モデルから実利を示すことが必要である。
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リモートワークやオンライン会議によって、必ずしも必要ではない移動の存在を明らかにした。そのため通勤通学以外の移動に関するデジタルサイネージの利用を考えるべきだ。観光も含めた旅行者、移動者への情報提供はこれまで以上にニーズがある。これはかつての観光バスガイドの進化系のようなもので、そのアウトプット先は能動的なスマホではないはずだ。
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リモート学習に関することもデジタルサイネージ的に考えたい。これからは自宅学習は勿論、離れているオフラインの教室同士をつなぐことも増えていく。教室の壁に別の教室を映して、2つの異なる空間をマージさせるようなものや、オンラインの学生がオフラインの教室に映し出されるのもあるだろう。後述するメターバースの世界観に近い。
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デジタルサイネージは街に飛び出すインターネットであるわけだが、これは言い方を変えれば、リアルな場所においてインターネットを拡張するものなのだ。特に若年層においては、電車の中、店舗、場合によっては歩きスマホをしながらでも執拗にネットに繋がろうとしている、これはメタバースがリアルとの融合を求めている何よりの証拠である。メタバースが本格的に普及するかは体験環境(例えばHMDの進化)に大きく依存するだろうが、メタバース空間にこれまでのオフラインOOHでのロケーションビジネスを持ちこむことだけに終始させないことである。
また、米国では既にリアルなNFTギャラリーに顕著な動きがある。デジタルサイネージに自分が保有しているNFTを掲載するトレンドも生まれてきており、広告を出稿する権利をNFT化し、NFTの所有証明をした上で広告を掲載する行為は、メタバースやWeb3.0時代における新しいエンタメ体験となっていく可能性を秘めている。当面はこれまでの予約型の広告モデルに近いが、枠売りではなくトランザクションベースのものになっていくだろう。(Y.E.)