NFTが加速するデジタルサイネージの新しい波
デジタルサイネージにもNFTの波が来た。クリエイターから見たこうしたトレンドについて、昨年のデジタルサイネージアワード2021で優秀賞に輝いた「Next World ExhiVision」を手がけた、株式会社電通デジタルのクリエイティブディレクター 川村 健一氏のインタビューをお読みいただきたい。
昨年末と今年の初めに立て続けにリリースされた以下の2つのニュース。
・銀座に「NFT作品」飾る枠、NFT化してオークション販売 コレクター参加DAYも年明けに開催【NFT WEEKS TOKYO】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000033850.html
・日本初:表参道の屋外広告をNFT化し販売へ NTTドコモ・株式会社電通グループ共同出資のLIVE BOARD社とCoinPostらが実証実験開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000033850.html
デジタルサイネージ関連の皆様も「ついに…!」という驚きと期待を持ったのではないだろうか?
そこで、クリエイターから見たこうしたトレンドについて、昨年のデジタルサイネージアワード2021で、優秀賞に輝いた「Next World ExhiVision」を手がけた、株式会社電通デジタルのクリエイティブディレクター 川村 健一氏に以下のコメントを寄せていただいたので、お読みいただきたい。
☆☆☆☆☆
NFTはまだまだ黎明期にありますが、国内の現状はというと、ようやくデジタルアートの領域で注目が集まり、メディアでも騒がれ始めている初動のタイミングかと思います。おそらく「NFT=コピーや改ざんを防ぎ、資産価値を与えるもの」と、言葉のみで捉えている方からすると、これらの事例は少し違和感があるかもしれません。
ただ、NFTの背景を知ると、とても自然なことだと理解できます。
NFTコレクターにとっては、街にアートを掲載することでアーティストやコミュニティの応援になりますし、掲載するアートの価値を世の中に問う機会が生まれます。作品が人目に触れることで、アートの価値を高めるきっかけにもなるため、自分が落札した価格以上の金額で売却できる可能性も高まります。
アートの作者からしても、この流れはメリットがあります。作品の露出が増えていくことは自身のブランディング強化につながりますし、NFT作品は転売時にもアーティストにお金が入るため、名声と経済面、両面で有効だからです。
デジタルサイネージの特徴は、場所、時間、人をイメージしやすいメディアだということにあると考えています。街には、集う人、カルチャーに特徴があるように、時間も人を把握する上で大切な要素です。そのような生活者が見える化された文脈の中で、コンテンツをピンポイントに、ノイズなく、自然な流れで提供できることがデジタルサイネージの強みといえるでしょう。
デジタルサイネージの出稿に目を向けると、今までは企業が担うことが多く、多くがブラックボックス化されていました。落札者が自分の肌感覚で手軽に出稿できるようになると、NFTアートの流通を変えていく大きなモメンタムになっていくのではないでしょうか。
私自身の取り組みでは、2020年にデジタルサイネージを活用したアートイベント「Next World ExhiVision」の企画・運営に携わりました。コロナ禍におけるステイホームの時期、活動の場を失ったアーティストと、アートに触れる機会を失った多くの方に、日本全国にあるデジタルサイネージを通じてアートとの接点をつくれないかとの思いから実施した取り組みです。
Next World ExhiVisionでは、コロナ禍の中、失われたアートの場を提供することにこだわりましたが、このような取り組みにNFTを取り入れることで、アートイベントの概念をさらに拡張できるのではと非常にワクワクしています。近いうちに必ず実現したいと思います。
NFTのような生活やビジネスの概念を大きく変えるテクノロジーは、初動の段階では否定的な目で見られることが多くあります。変化を否定するのではなく、自分ゴトとして、楽しみながら取り入れてみる。その結果が、あらたなサービスデザインにつながっていくのでしょう。NFTの登場によって、ますますデジタルサイネージから目が離せなくなってきました。
☆☆☆☆☆
街をギャラリーと解釈し、デジタルアートで飾る、道行く人に見せるという行為が、より個人のレベルにまで解放され、掲出されるコンテンツの審査なども恐らくAIが担う。
デジタルアートのNFT化だけでなく、デジタルサイネージの設置場所そのものもNFT化される。そんなステージに突入した。インタビュー担当(M.I.)