AIによる広告クリエイティブ評価
学んで賢くなっていくAIによって、広告クリエイティブに向けられるアテンションを推測する事例を紹介。視認者の視線を、向けたいところに集めるためのソリューションとして使われている。
広告クリエイティブのインパクトは、広告キャンペーンに様々な形で大きく影響するが、質的・量的な分析が難しい。インパクトと一言にいっても、種類も多様、インパクトの受け手も多様。広告のマーケティングゴールによっても異なる。さらには、広告を掲出するメディアによっても、同じビジュアルのインパクトが違ってくることは容易に推測できる。
広告クリエイティブの事前評価は、ヒヤリングベースの調査に加え、専用のツールを使ったアイトラッキング、脳波、顔の筋肉の動き等、進化を遂げている。好きか嫌いか、印象がよいか、悪いか等、情緒を聞くものから、実際に目や脳が出す反応から推測するものまで、多種多様だ。
シンプルに「アテンション」に注目して、人の「目が留まりやすい」「留まる時間が長い」広告クリエイティブの要素を推測する事例を紹介したい。
JCDecaux グアテマラで、2021年にUber Motoの屋外広告キャンペーンが実施された。グアテマラの首都の地下鉄駅の近くで乗客をより速く、より安い運賃で輸送する手段として、Uberがモーターサイクルによるサービスをスタート。導入期には、割引クーポンを発行し、クーポンの告知と利用拡大がキャンペーンのマーケティング目標だ。
「待たずに行きましょう。Uberのアプリにアクセスして50%のディスカウントをゲット」という内容のコピーと、バイクに乗ったUberマンのイラスト、右下にUberのロゴ。UBERMOTOというサービス名には、色掛けがなされている。
さてこのクリエイティブを見た人は、どこに注意を向けるだろうか。Deep learning modelに基づいたテクノロジーで、AIがアテンションを推測すると、右のようなヒートマップが作られる。
色掛けされたUBERMOTOというサービス名が赤くなっていることから、アテンションが最もいきやすいのはサービス名であることがわかる。次いでコピー全体、バイクマンの横顔にアテンションがいきやすいらしい。
アテンションをさらに高めるために、もう少しモディファイしてみたのがこちらのクリエイティブ。テキストのフォントを大きくし、サービス名のレイアウトも変更。Uberのロゴを拡大。
アテンションはさらに広く際立つ結果になる、と推測された。赤い部分が広がり、最も重要なサービス名に集中。その上下に位置しているテキストやバイクマンの横顔も、相乗効果で色が強くなっていることがわかる。前回のクリエイティブではほとんどアテンションが向いていないUberのロゴは、少し色が強くなっている。
このクリエイティブが最終版として掲出された。
インパクトがあり、ROIが高いクリエイティブを、と誰もが模索する中、絶対的な答えを導き出す調査や分析は、今後もなかなか出てこないだろう。しかし、より多くの人に広告を視認させ、より長く目線が滞留させるようにする「微調整」は可能だし、有効だと思う。専用のツールを使わず、時間をかけず、コンピューターがquickに答えを出し、出せば出すほど精度が上がっていくAIのベネフィットがこんなところにも。(Y.T.)
参考:https://www.jcdecaux.com/blog/ubers-ooh-creative-optimised-guatemala-jcdecauxs-creative-heatmap-solution