テクノロジーがサイネージに与える新しいリアリティ
デジタルサイネージは今や街の構成要素の基礎セットになった。人流の多い街では、どこもサイネージは飽和状態になってきている。そのような中で、街を埋め尽くすサイネージの中から抜きん出るための仕掛けが目につくようになってきた。
街中にあふれるサイネージから抜きん出る視点で、まずベーシックにあるのは、ビジョンの大型化や複数ビジョンの連携による空間ジャックであろう。渋谷スクランブルスクエアの大型ビジョンや、渋谷駅前の5つのビジョンのシンクロ放映などが思い浮かぶ。
そして近年新たに、テクノロジーの力を使って存在感を増すものが出現してきた。
中国、韓国に先進事例が多く、例えば冒頭にキャプチャを貼りつけたものは、中国成都市の3Dビジョン。実はこれはクリエイティブの力による “疑似”3Dなのだが、2つの壁面をRで繋げることがそれを可能にしている。同様のものが韓国の江南にもある。これらはGASKETというサイトからの引用なのだが、江南のビジョンも含め詳しく記述されているのでぜひご覧いただきたい。
また日本では、透過型LEDビジョンを使ったものが渋谷駅前QFRONT屋上に登場している。「渋谷ICONICビジョン」と名付けられた、まるでクリエイティブが宙に浮いているようなビジョンは、特に夜間に異彩を放っており、東京屋外広告コンクールでは東京都知事賞を受賞している。
https://www.youtube.com/watch?v=h-9pxOda5DQ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000499.000001735.html
これらとはまた別に、LEDのついたブレードを回転させることで空中に画像が浮かび上がるものが、渋谷駅と渋谷フクラスの接続歩行者デッキ、新宿アルタなどに設置されている。3D Phantom(R)という名前で、施設内も含め設置個所が増えているようである。
https://www.youtube.com/watch?v=PSbmMdd955w&feature=youtu.be
そして、この5/19には、Googleがオンラインイベント「Google I/O 2021」で「Project Starline」を発表した。この「Project Starline」はサイネージではないのだが、“高精細なカメラと特別に開発した深度センサーを用いて複数の視点から対象を撮影し、非常に細かなディテールを備えたリアルタイムな3Dモデルを作成”し、これによりオンラインの相手とまるで目の前にいるかのように向き合えるというもの。映像に限りないリアリティを与えるテクノロジーとしてとても興味深い。
https://www.publickey1.jp/blog/21/googleproject_starline3dgoogle_io_2021.html
いくつかの事例を紹介したが、このようにデジタルサイネージも新しいテクノロジーを貪欲に取り入れ、進化/多様性を持つようになってきた。これらはサイネージの存在感を上げ、没入感を高める。ただ忘れてはならないのは、そのために最も重要なのはコンテンツ/クリエイティビティということだろう。新しい仕組みは、そのクリエイティビティを載せる器にすぎない。そしてそこにまた新しいビジネスチャンスがある。ここでもコンテンツ イズ キングなのである。(K.K)