DSC EXPRESS
Vol.020

DSC EXPRESS Vol.020をお届けします。
毎月15日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。

  • 「マイノリティ・レポート」の世界を実現する「パラレル リアリティ ディスプレイ」登場

    「マイノリティ・レポート」の世界を実現する
    「パラレル リアリティ ディスプレイ」登場

    デジタルサイネージの近未来を表現している映画「マイノリティー・リポート」はご存知だろうか。虹彩認証によってオフィスのエントランスで、地下鉄のホームで、ブティックの店頭で、至る所で市民は眼球をスキャンされ、サイネージディスプレイが個人向けの広告で語りかける、という場面が有名である。スティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した作品で、トム・クルーズが主演した。
    昨今の技術革新によって。AIによる個人特定やデジタルサイネージコンテンツの出し分けはすでに実用域に達しようとしているのはご承知のとおりだ。しかし、個人は特定できたとしても(あくまでもプライバシー問題は考慮されるとしてだ)、サイネージの前に複数の人がいた場合に、表示装置も複数必要となり現実的ではない。
    ところがこのマイノリティ・リポートの世界がいま、現実のものとなったのである。
    ワシントン州ベースのスタートアップ、Misapplied Science社の「Parallel reality」技術がそれを現実のものとした。CES2020のデルタ航空のキーノートで紹介され、同じくデルタ航空のブースで実際に体験することができるのである。デルタ航空はCESへは初出展で、航空会社としてのキーノート登壇も史上初である。
    ブースでは、4人一組になってQRコードが付いた架空の搭乗券を発券する。これをスキャンさせるとディスプレイ上にゲート案内や搭乗時刻などのフライトインフォメーションが表示される。ここまでは普通の話だが、驚くことに、4人がそれぞれいる場所から見ると、それぞれのフライトインフォメーションが表示されるのである。あくまでもディスプレイは1台なのに、である。もちろんメガネやゴーグルはなく、肉眼でそれが可能にしているのである。
    仕組みはこうだ。新技術による単独ディスプレイによる複数画像の表示と、AIによるオブジェクト認識によって、自分の今いる位置から見ると自分向けの情報だけを表示させることを実現させている。さらにオブジェクトトラッキングによって、移動してもそれに追従してくるのだ。驚くべきテクノロジーである。これは、「マルチビュー」ピクセルによって可能になる新しいタイプのディスプレイだ。 それぞれがすべての方向に1色の光を放射する従来のピクセルとは異なり、Misapplied Sciencesは、ピクセルが数万または数百万の方向に異なる色の光を送ることができると言う。
    Parallel realityによるサービスは、デトロイト空港のデルタ航空のターミナルで2020年夏から開始される予定である。(Y.E.)

  • 2030年を見据えた動きの始まり

    2030年を見据えた動きの始まり

    いよいよオリンピック・パラリンピックイヤーの幕開けである。この祭典をターゲットに開発されてきたさまざまな技術が実装されるのを見たり体験したりすることも楽しみである。
    一方、ポスト・オリパラを見据えた動きも始まっている。本稿では、少し時間が経ってしまったが、昨年の11月に行われたNTT R&Dフォーラム2019について、その一部を紹介したい。

    今回のNTTR&Dフォーラムの目玉は、なんといっても5Gが普及した後の2030年に向けた、次世代コミュニケーションネットワーク基盤、「IOWN( Innovative Optical and Wireless Network)」構想の提示と言えるだろう。
    当日は、IOWN構想の概要と、その実現に向け、NTT、インテル、ソニーにより、先立って発表された業界フォーラム設立と参画の意図についても、各社から説明が行われた。
    2030年代には「インダストリー4.0」あるいは「ソサエティ5.0」の文脈でも語られている通り、医療、交通、金融、エネルギー、製造、防災、教育、エンターテイメント、スポーツなどのあらゆる産業分野において、デジタルコミュニケーションがさらに進展する。そうした時代の要請に応えるべく、今後、
    (1)オールフォトニクス(光)ネットワーク
    (2)エッジコンピューティング
    (3)無線分散コンピューティング
    といった技術による新たな基盤の実現を、今後さらなる参加者を募り、共に目指していくのがこの取り組みの目的とのことである。
    現在のコミュニケーション基盤は、人間が持つ限られた能力を、限られたネットワークやデバイスの情報処理能力によって、人間にとって必要で都合の良い結果を得るためにのみ使っているが、昨今の異常気象のような現時点では予測が困難なものに対応したり、SDGsの目標を達成したりしていくためには、もはやヒトを超えた他の生物の能力も活用していく必要があるという。例えば、ヒトは3原色しか知覚できないのに対し、シャコは12色を、ミツバチは紫外線を知覚する能力を保有する。それらの情報をまるごと「デジタルツイン(フィジカル空間の情報をIoTなどを活用して、ほぼリアルタイムでサイバー空間に送り、サイバー空間内にフィジカル空間の環境を再現すること)」に取り込み処理することで、フィジカル空間で起こりうることを、サイバー空間でシミュレーションすることによって、これまでのように人間にとってのみ都合の良い「フィルタリング」をすることなく、全体最適な結果を導き出すことも可能になる。
    しかし5Gが実用化した段階においても、まだその実現のためには、さらに高速大容量な情報処理ができるチップや、加速度的に必要になる電力の大幅な削減など、いくつもの課題が残る。それらを解決することが今後のIOWNの成功のためには必要だ。

    「サスティナブル」で「スマート」な時代の到来と、その実現のために必要な技術について考えを巡らせる良い機会となった。興味のある方は、「IOWN」で検索するとさまざまな動画が公開されているので、ご覧いただきたい。また、詳しくは書籍も刊行されているので参考にして欲しい。(M.I.)

  • デジタルサイネージ
    NEWS解説

    ワンダーフューチャーコーポレーション、デジタルサイネージ等の低コスト修理を実現する受託サービス「IH-EMS™」の提供を開始 記事元:PR TIMES 12月9日

    本サービスを通じて、LED等を搭載したサイネージやデバイス、ディスプレイなどで生じる不良品のリペア作業を周辺部品にダメージを与えることなく実施可能となり、各種メーカーの製造品質向上、コスト削減に貢献します。今後は、次世代ディスプレイ技術として注目されるミニLEDやマイクロLEDのリペア作業に対応するとともに、フレキシブル・エレクトロニクスを更に普及させるため、IH-EMS™を部品リペア以外の用途に展開、拡大してまいります。

    ディスプレイは液晶パネルからLEDなど種類は多岐にわたるが、いずれも購入時はある程度の費用が掛かり、定期的に行なうメンテナンスや修理・交換費用も軽視はできない。(液晶パネルの耐用年数は、業務用ならば一般的に5年程度とされている)
    また、配信機器等に於いても、同様のことが言えるであろう。
    予期せぬハードのトラブルも納得のいくものばかりではなく、対応に必要なコストについても同様ではないだろうか?
    今回の記事でその内容の一端を知ることができた。それは、サイネージ機器内の不良箇所に対するリペアが容易ではないこと。よって不良機器は廃棄せざるを得ず、コストが上がっていたのだという。
    しかし記事中にある「IHスポットリフロー」技術は、不良箇所周辺に影響を及ぼさない安全なリペア作業により、今まで諦めて新規交換していた不良機器を、使い続けられる可能性が出てくるのだ。サイネージの維持・管理についてのコストをより抑えるための技術である。サイネージ運用に於けるハードの維持・管理面でのコスト軽減という視点を、筆者は大いに評価したい。
    こうしたサービスがより普及し、デジタルサイネージを導入・維持し続けるためのトータル的なハードルがより下がっていってくれることを願うばかりである。(K.S.)

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