感動をさらに広げる、近年のマラソン応援スタイルの変化
マラソンの応援は、野球やサッカーなどメジャーなスポーツ観戦と比べると、地味で見どころがわかりにくいと感じられるが、近年のデジタル技術の活用によりそのスタイルは大きく変化している。さらにマラソンの応援がより一層メジャーになり、新しい形に進化するディスプレイとの融合の可能性はすぐそこのようだ。
先日、私は初めて友人が出場するマラソン大会の応援に出かけた。これまで、マラソン大会の応援といえば、沿道で声をかける、時には旗をふる程度ですぐに通過してしまい、正直言ってどのように楽しめばいいのかわからなかった。応援したいランナーの通過を待つ時間は長く、限られた一瞬しか声援を送ることができない。そのため、応援する側にとっては単調で地味な印象であった。
しかし、今回マラソンの応援をしてイメージが変わった。今回観戦したマラソン大会では、応援するランナーが今どこを走っているか追跡でき、どこにいても応援できるアプリ「応援navi」が活用されていた。このアプリは、ランナーの走行位置を地図上に表示してくれ、各地点での予測タイムもリアルタイムでわかり、応援メッセージを送ることもできるWEBアプリケーションである。このアプリがあれば、応援する人はただひたすら寒い中、選手の通過を待ち続けることは不要になり、その場にいなくても密かに応援することも可能だ。さらに複数のランナーを同時に追跡、コース上に表示させることもでき、記録もリアルタイムで確認できるため、「いま疲れているな」「調子が出てきた!」「よし、いいペースで走っている」と見えないランナーの状態がわかり応援する側も楽しめるのだ。
このように「応援navi」は秀逸なアプリだが、私は沿道で実際に「応援navi」を活用しながら応援していてどこか物足りなさを感じた。それは、個々の応援がスマホの中で完結してしまい、観客全体での盛り上がりや一体感が生まれにくい点である。野球でホームランが出た時や、サッカーで素晴らしいプレーがあったり、惜しくもゴールを外したりした時などにスタジアム全体が一喜一憂するような、あの臨場感や一体感がない。そこにいる沿道の皆さんと、もっと一緒に盛り上がり臨場感を持って応援でき、それがランナーに伝わるにはどうしたらいいだろうか。
それはやはり、私が携わるデジタルサイネージの活用しかないと考えた。
もしかするとすでに導入されている大会があるかもしれないが、例えば、ゴール地点の大型スクリーンにランナーの走行データと応援メッセージを同時に表示することで、応援の感動をより広く共有でき、共感をもたらす。家族や友人が送ったメッセージがリアルタイムでスクリーンに映し出され、それがランナーのゴールシーンと重なることで、選手と応援者の感動が一層高まるだろう。
マラソンの応援は、「応援navi」によって個々に便利に楽しめるようになった。一方で、感動をより広げるには、スマートフォンにはないデジタルサイネージの公共性が重要に思う。街で液晶ディスプレイを目にしない日はないが、LEDビジョンを容易に導入できるディスプレイ新世代の到来はもうすぐそこ。大型のLEDビジョンを活用すれば、会場全体で感動を共有できる。マラソンの応援文化を発展させるには、デジタルサイネージの活用がより鍵になってくるだろう。
(E.M.)