DSC EXPRESS
Vol.178
DSC EXPRESS Vol.178をお届けします。
毎月5日、15日、25日発行です。どうぞよろしくお願いいたします。
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ソウルで膨大な数のLEDディスプレイが
インストールされている理由
韓国ソウルのデジタルサイネージ市場は急速に拡大中。駅や商業施設、空港リゾートなど、都市全体でLEDディスプレイが導入され、新たな景観と体験価値を創造している。その背景には政府の助成政策も。
DSCのマーケティングラボ部会では、1月8日から10日にかけて、韓国ソウルのデジタルサイネージの視察を行った。筆者個人としてはおよそ2年半ぶりのソウル訪問である。
この2年半の間に、膨大な数のLEDディスプレイが新たに導入されていた。例えば地下鉄の駅の柱や階段横の壁部分は、殆どが100インチクラス以上でLED化されている。解像度は2ミリ台だと思う。柱巻きのLCDはどんどんLED化されている。
最も印象的なのは照明技術だ。500台のムービングスポットライトと精密に設計された光の演出により、観客は仮想と現実の境界を完全に見失なってしまう。ジョージ・ルーカスのILM(Industrial Light & Magic)が手がけた演出は、6500万ピクセルのLEDウォール、同期したムービングライト、そして効果的に配置されたレーザー光線を駆使し、驚くほどリアルな体験を生み出している。
地下鉄カンナム駅
カンナムのメディアポールはすでに3世代目になり、より大型化している。
カンナム交差点のメディアポール
現代百貨店の外壁面も完全に巨大なLEDに完全に覆われた。ロッテ百貨店のヤングプラザは全面がシースルーのLEDである。
何と言っても圧巻なのは、インチョン空港に隣接するインスパイア・エンターテインメント・リゾートである。ここは2024年3月にオープンした大規模複合型リゾート施設で、プチラスベガスと言うような場所だ。特に「オーロラ」と呼ばれる長さ150mのイマーシブエンターテインメント・ストリートでは、天井面をLEDディスプレイ化し、全く新しい空間価値を創造している。長さが長いのでロンドンのOuternet 以上の体験ができる空間なっている。
スターフィールド COEX周辺は、2016年にニューヨークのタイムズスクエアやロンドンのピカデリーサーカスのような、多様な屋外広告物が設置される「自由表示区域」、日本的に言えば「サイネージ特区」に指定されている。経済視点、観光視点、さらにデジタレサイネージによって都市景観を作り出すという発想である。
いささか感覚的な言い方だが、ソウルのLEDディスプレイによるデジタルサイネージは、面積比で東京の数十倍といった規模だ。中国深センよりも多い気がする。
日本でのLEDディスプレイ価格から推測すると、ちょっと考えられない数である。これには理由があり、韓国政府がLED導入に50%の助成をしているからだ。これは韓国メーカーの製品またはインストールに限るのだが、しかしLEDディスプレイは韓国メーカーはほとんど存在しておらず、実際には中国メーカーのOEMなどなのである。
こうした視察結果を踏まえると、日本でも都市景観や観光振興を目的としたデジタルサイネージの戦略的導入が期待される。この分野で韓国のような規模感を実現するには、政府の助成政策や都市計画のビジョンをどう取り入れるかが鍵になりそうで、DSCがそれをリードしていくしかないのだと思う。
これらの動画や写真はこちらの記事にまとめてあるのでごらんいただきたい。
(Y.E.)