アンビエント広告とデジタルサイネージの事例
アンビエント(Ambient)とは、直訳すると「周辺」「環境」を意味する言葉です。 アンビエント広告は、周辺環境に馴染む広告の手法で、最近では「新宿の猫」などの事例がメジャーですが今回はデジタルサイネージで、その形や周辺の環境を生かしてクリエイティブ展開した(筆者が好きな)事例をご紹介します。
エレベーターの床にディスプレイを敷き詰めた「LG」のドッキリ広告
韓国メーカー「LG」が、自社液晶ディスプレイが高画質である事をアピールするためにエレベーター内で展開したアンビエント広告です。
エレベーターの床にLGの液晶ディスプレイを敷き詰め、最初はエレベーターの床の映像を映しています。しばらくして人が乗りこみエレベーターが動き出すと、ディスプレイに床が抜け落ちていく映像が映し出され、その場にいる人は床が抜けたと思ってパニックになってしまうというものです。
少し悪乗りが過ぎている感じもしますが、本当にエレベーターの床が抜けたと思うほどディスプレイが高精細であるということがわかりやすく伝わるアンビエント広告と言えます。
 
「ネスカフェ」コーヒーを集めて商品をゲットするユーザー体験型のプロモーション
ネスカフェが上海で展開したプロモーションで、地下鉄の駅の一角に、大きなスクリーンが設置されており、指定された位置に人がたつとゲームが開始される仕組み。ゲームはプレーヤーが左右に動くとスクリーンに表示されたコーヒーのボトルが連動して動く仕組みになっており、上から落ちてくるコーヒーの水滴をボトルでキャッチするルール。
制限時間内にボトルを一杯にできればクリアとなり、クリアした場合はQRコードが表示され、近くの自販機にQRコードをかざすと無料でコーヒーがもらえるという仕掛けになっています。
ゲーム自体がシンプルで分かりやすいので、老若男女いろいろな人が参加した面白い事例です。
 
自動販売機に男性が入っているように見えるデジタルサイネージ
イギリスのお菓子メーカー「Walkers」が展開した、商品サンプリングとSNS拡散を狙ったキャンペーンで、バス停に設置された自動販売機にデジタルサイネージを設置し、その画面に男性が映し出され、まるで自動販売機の中に入っているかのような不思議な光景。
画面に映っている男性が、バス待ちの人に対して挨拶をしたり、スマホを向けられてポーズを決めたりとさまざまなアクションを起こします。
そして「ツイートしたらお菓子を無料であげる」と書かれたメッセージカードを見せ、その場にいる人がツイートをすると、自動販売機から新商品のサンプリングが出てくるというインタラクティブなアンビエント広告です。
 
夜空を彩るドローンショーは「空のデジタルサイネージ」のアンビエント広告
ドローンの進化により「空もデジタルサイネージのキャンバス」になりました。記憶に新しい東京オリンピックの開会式や大きなイベントにおいてドローンが活用され、ドローンショーの認知は高まりました。画像や動画付きでSNSに積極的に投稿され、ドローンショー自体の感動に加えて、広告であっても「ドローンショーであれば見たい」という肯定的な意見も沢山散見されており、新しいOOH手法として可能性を感じます。
 
ご紹介した事例の様に、様々な技術も取り入れ、従来のポスターや看板、デジタルサイネージの既成概念にとらわれないアプローチで、場所(環境)を使ってアプローチするアンビエント広告は、一方的でなく、いかに見た人の心を動かし記憶に残る内容にするかということが重要である事が改めて良くわかります。
デジタルサイネージを取り巻くテクノロジーに、更に斬新なクリエイティブなアイデアを加えることで表現の幅は今後もますます広がりを見せていくでしょう。
現在ご検討中であれば、アンビエント広告も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
(N.Y.)