DSC EXPRESS
Vol.146

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  • DOOHで広がるインプレッション販売~デジタルサイネージにおけるメジャメントデータの活用~

    DOOHで広がるインプレッション販売
    ~デジタルサイネージにおけるメジャメントデータの活用~

    デジタルサイネージが多用されているOOHの分野では、その特性上、広告の接触者数や属性を把握しにくいという課題があったが、昨今はメジャメントデータによるDOOH広告のインプレッション販売の動きが活発になっている。今回はそのトレンドについてご紹介したい。

     デジタルサイネージの主な四つの用途のうち、広告ビジネスは市場規模も大きく、各地で新たな事例が話題になっている分野であり、大型の屋外ビジョンや駅構内・電車内のサイネージはD(デジタル)OOHとして主要都市圏ですっかりおなじみの風景となっている。このOOH(屋外広告・交通広告)はテレビなどのマスメディアよりも長い歴史を持っているが、その立地やメディアの特性上、広告の接触者数やその属性を把握しにくいという課題があった。しかしながらOOHの広告効果は広告主にも評価されており、主に不特定多数に向けて大きなリーチを獲得するためのメディアとして活用されてきた。一方、テレビ視聴率やWEB広告の成果報酬型の販売が普及するにつれて、DOOHの分野でもその広告効果を定量的に把握したいとのニーズが高まり、業界内で様々な企業や団体による取り組みが活発に行なわれていることは過去にご紹介した。当DSCでも2021年3月にはオーディエンスメジャメントガイドライン 第1版」を公開し、2022年10月には国際的な業界団体であるWOO(World Out Of Home Organization)が策定した「OOHオーディエンス測定の新しいグローバルガイドライン」日本語版」を発行している。

     まさに現在進行形のテーマではあるが、このメジャメントデータによるDOOH広告のインプレッション販売の動きが活発になっている。OOHにおいてインプレッション販売を行なうためには、広告掲出期間におけるサイネージの視認者数の推計が不可欠であり、一般的には①位置情報や通信キャリアのデータ、センサー等を活用してリアルタイムな媒体接触可能人数を推計し、②推計モデルや調査データに基づく視認率を乗じてメディア毎のインプレッションを算出する手法が用いられている。

     このトレンドの先駆けとして2019年11月に埼玉高速鉄道はDOOHのプラットフォーム事業者であるLIVE BOARD等と連携して車両内のサイネージ「ダイナミックビークルスクリーン」でサイネージに設置されたカメラから得たデータをベースにした「インプレッション販売」を始めることを発表している。その後、コロナ禍によるテレワーク拡大や外出自粛などの影響で屋外や交通機関の人流が減少したことや、キャリアデータやセンサー類の普及も後押しして、OOH業界全体で定量的な広告価価値を把握・提供していくことが急務となり、各社のトライアルは加速した。2022年9月には大阪メトロアドエラが自社の駅構内サイネージ249面をLIVE BOARDのSSPに接続、オーディエンスデータに基づくフレキシブルな配信や、インプレッション(広告視認者数)販売を開始しており、これに前後して複数のサイネージ事業者が試行・本行を含めてLIVE BOARDのマーケットプレイスシステムと連携している。

     直近のトピックとして2023年12月に東急エージェンシーは自社の屋外・交通デジタルサイネージにおいて、インプレッションでの取引が可能な広告配信サービス「T-Track(ティー・トラック)」を開発、本年1⽉より販売を開始している。またジェイアール東日本企画も2024年2月に同社が開発したマーケットプレイスシステム「MASTRUM(マストラム)」を活用したインプレッション販売の第一弾として、JR東日本「トレインチャンネル全線セット」で期間内のインプレッション数を保証した販売をスタートした。

     従来から広告料金に基づく「予約型販売」がベースであったOOHの分野でも、サイネージを軸として「運用型販売」につながるアクチュアルなデータに基づくインプレッション販売がゆるやかに始まりつつある。マーケットプレイスの普及により、交通・屋外・WEB広告のボーダーレス化はますます進むと考えられるが、各メディアの特性を考慮した単価設定や運用プラットフォームの標準化、コンテンツ入稿仕様の標準化などクリアすべき課題はまだまだ多い。

     OOH激変期と言われているアフターコロナの昨今、サイネージの裏側でおきていることにも注目したい。(T.Y.)

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