デジタルサイネージの広告マーケットについて
毎年、この時期に(株)電通「日本の広告費」が公開され、2022年データがもうすぐ明らかになる。デジタルサイネージは、プロモーションメディアの「屋外」が主なデータとなるが、コロナの影響を受けた2020年に15%落ち込んでから回復していない。今回はどうか?
プロモーションメディアは2019年に2.2兆円と前年比+7%と昇り調子に転じていたものの、2020年にはコロナ影響をまともに受けて-25%の1.7兆円に落ち込んだ。このうち、デジタルサイネージ化が進む「屋外+交通+POP」は-18%の0.6兆円だった。-39%と大幅に落ち込んだイベント・展示等よりは軽傷だったが、デジタル化、すなわち、インターネットとの連携が思うように進んでいないタイミングで、まともにコロナ影響を受けてしまった。
そして、この間、一人勝ちで伸びたのがインターネットであり、2019年から2021年にかけて0.6兆円増で2.7兆円に達し、媒体別では断トツの存在となった。もともと、ネットショッピングを中心に進展していたところに、巣籠り効果やリモートワーク普及という超加速要因が加わったのが大きい。
インターネットの中に「マス四媒体由来のデジタル広告費」というカテゴリが2018年から登場しているが、こちらも、2020年が+12%、2021年は+32%で1千億円を超えて絶好調だ。デジタルサイネージの主戦場である「屋外+交通+POP」も、急いで、このデジタル化の波に乗りたい。雑誌デジタルやECプラットフォーム等では、既に、デジタルサイネージとの連携事例が含まれているようにも思われるが、デジタル地域通貨・ポイント等の活用も含めて、まだ、実験段階である。コロナ禍の街中では、大型デジタルサイネージとスマホを連動させて、感染の正確な情報を届けたり、避難誘導情報を表示したり、意義ある実証プロジェクトが話題にもなった。
しかし、今後のことを考えると、マス四媒体と同様のスピードで取組んでいては、少々、危ない状況かもしれない。街中の大型デジタルサイネージは、順調に増えてきている。3D化や高精細化も進み、クリエイティブも、どんどん高品質になっている。残るは、インターネットとの連携というデジタル化の作業を加速する作業だろう。デジタルマーケティングのツールやテクノロジは普及レベルと言える状況だが、アイディアとコーディネーションのパワーは、もっと必要だ。
さて、2022年の「インターネット」と「屋外+交通+POP」のデータに注目しよう。
(S.N)
「参考図;主要メディア別日本の広告費の推移(2005~2021)」