インフラの社会実装としてのデジタルサイネージ
デジタルサイネージに関わるプレイヤーがさらに多彩になってきた。より身近に、より自然に、人々の生活シーンに溶け込みつつある。本格的な社会実装の段階に入ったことを実感させられた、2年ぶりにリアル開催が実現した「DSJ 2021」となった。
2021年4月14日(水)~16日(金)、「デジタルサイネージジャパン2021」(以下DSJ)が、2年ぶりにリアルとオンラインのハイブリッドで開催された。
昨年はコロナ影響でオンライン開催のみであったが、今年は、緊急事態宣言解除後、再び開催直前のまん延防止等重点措置の適用で、大変ハラハラしたものの、無事開催することができた。関係者の皆様のご尽力に、心より敬意を表したい。
会場への来場者数の3日間の合計は、37,703人(2019年は155,801人)と、通常開催の年には及ばないものの、オンライン視聴者を合わせると例年の約40%もの方々にリーチすることができたようだ。
出展者に関しては、数こそ少なかったが、DSJの開催が始まったころに比べるとずいぶんと顔ぶれも変わり、裾野の広がりを見せているとともに、それらのさまざまなプレーヤーが知恵を絞り、より「アンビエント」な方向に進化し、その場所や生活シーンに溶け込んで来ているように感じられた。まさに要所要所でデジタルサイネージの社会実装が進んできている、という印象を持った。
同時開催の「Interlop21」において、インターネットの父、慶応大学の村井教授の基調講演を聴講したが、大変感慨深いものであった。
「IT基本法」が施行されたのは2000年、国の理念あるいはポリシーとして、国民がインターネットを自由に使える国にするため、まずはインフラの整備と産業の振興をめざした法律であり、その実行体制としての「IT戦略本部」の設置が当時の総理大臣の所信表明で謳われた。
それから20年が経ち、今年9月には、そのIT基本法が役割を終え、新たに「デジタル社会形成基本法」が施行され、その推進のために「デジタル庁」が設置される予定である。
今の日本は、これまでのIT政策の成果として、インフラは整い、日本国内ではほぼ100%の人がインターネットにアクセスできる環境が整っている一方で、予想もしていなかった昨年来のコロナ禍で、その社会実装という観点での遅れが一気に浮き彫りになった。
その遅れを今後早期に解消するために必要なのが、ITを社会や生活の中で活用するための知恵と場とシチュエーションである。
その活用の一つの形として、情報の見える化という観点でDXを担うのがデジタルサイネージでもある。データやAIを適切かつ十分に活用しながらも、より自然に、美しく、快適に生活の中に溶け込むデジタルサイネージ。今後、そんな進化がさらに求められる。
今年のDSJでは、そうした新たな息吹を感じ取ることができた。さて、来年はどうなるか?(M.I.)