新型コロナ禍で改めて考える、
屋外メディアの価値基軸
首都圏で2回目の緊急事態宣言が出る中、屋外広告メディアビジネスは苦境に立たされている。人流が圧倒的に減る中で、屋外メディアにサーキュレーション以外にも価値指標はあるのか
首都圏で2回目の緊急事態宣言が出る中、屋外広告メディアビジネスは苦境に立たされている。人流が圧倒的に減る中で、屋外メディアにはサーキュレーション以外にも価値指標はあるのか。
2回目の緊急事態宣言は、厳しい10ヶ月を耐えて期末需要に期待を寄せる屋外広告市場に、更なる冷水を浴びせた。先の見えない状況は今後さらに続いていくと予想される。
屋外広告のメジャメントがサーキュレーション(来街者数や乗降客数などの人流数)を中心に組み立てられている以上、人口流動が半分になる3割になるというのは、TVスポットで言えば視聴率が半分になるようなものだ。
その上、新型コロナが収束を見せても、テレワークや働き方改革が一気に進んだことにより、ビジネスユースによる人口流動が元通りになることはないであろう。また、ネクスト新型コロナが出れば、また極めて短期間に世界規模で感染拡大する時代を迎えたことも事実である。
そのような時代に、屋外広告メディアには、接触者数以外にもメジャメント指標が求められる。
考えてみれば、屋外メディアの効果は、その場に来た人の目に留まることだけではない。例えば空間ジャックやシティドレッシング、街角を曲がると目に飛び込んでくる出会い頭のセレンディピティは、好感度醸成や瞬間認知を最大化する効果が高く、屋外メディアのインターネット広告にない魅力になっている。一方、元来の看板広告の目的は、来店勧誘や(商店の壁につけられたレトルトカレーの看板広告のような)その店に置いてある商品の購買後押しであった。このように屋外広告にはリーセンシーメディアとしてのDNAを受け継ぐ側面もある。また、どの街で展開するかによって、街の文化や文脈と重ね合わせることができるのも屋外メディアならではのものだ。
このように屋外メディアは「何人の目にとまるか」だけのものではない。であるならば、これらもまた効果を可視化する価値のあるものではないか。
定量化しにくいもののメジャメントは、4マスメディアやネット広告でもメソッドが完成されているとは言えない。援用できる仕組みがあまりないのも事実だ。しかし、ビッグデータ解析やアイトラッキングテクノロジーの普及により、クロスメディア活用下での個別の購買貢献度を抽出するサービスや、顔認証による感情解析技術ソリューションも表出してきた。位置情報データにもサーキュレーションを超えた分析の可能性が感じられる。
これらを目的に合わせて、もしくは組み合わせて価値を可視化することで、屋外メディアの真の価値が(もしくは新しい価値が)明確になるかもしれない。
今までの人流から何割減ったかではなく、他のメディアと比べてどれだけ価値があるかをプライシングのベースに置くことが、アフターコロナにおける屋外メディアの生存戦略たりえることを祈る。
まぁ、「実際に可視化したら逆の結果が出た」という可能性もあるのだけれど(笑)(K.K)