DSC EXPRESS
Vol.017

DSC EXPRESS Vol.017をお届けします。
毎月15日発行です。どうぞ宜しくお願い致します。

  • プログラマティックに向かわざるを得ないデジタルサイネージ

    プログラマティックに向かわざるを得ない
    デジタルサイネージ

    これまでのデジタルサイネージは、予め固定された枠を販売し、やはり予め予定された広告素材を掲出するものであった。そこにインターネットやローカルセンシングの結果をトリガーにして、表示する広告をダイナミック(動的)に変えるダイナミックサイネージが、欧米では主流になりつつあることをご存知だろうか。
    こうしたダイナミックサイネージは日本でも事例があるが、プログラマティックサイネージの事例はこれまでほとんどないと言ってもよい。プログラマティックサイネージとは、広告素材を外部データとの連携によってダイナミックに出し分け、SSPによってネットワーク化された広告在庫をDSP上で買い付けるものだ。しかし、ほとんどのデジタルサイネージ関係者は、このDSP(Demand-Side Platform)とSSP(Supply-Side Platform)という単語自体を知らないのではないかと思う。DSPは広告主利益を最大化するプラットフォームで、SSPは媒体の利益を最大化するプラットフォームである。これらはインターネット広告におけるアドネットワークの登場以降当たり前のものとなり、デジタル広告の市場拡大に大きく寄与し、一方ではアドフラウドのような問題も引き起こしながらも、テレビのようなメディアにも広がり始めようとしている。
    こうした理由は単純で、広告主はデジタルサイネージに出したい、テレビに出したい、WEBに出したいというような意思などなく、ターゲットに合った、最も効率的なROIを出してくれるメディアへの配分を望んでいるだけである。そしてこの場合に重要なのは、異なるメディアであっても同じ尺度での比較ができて初めて配分や効率がわかるのだが、日本のデジタルサイネージ業界には他のメディアと比較可能な標準指標がないため、最初のプランニングの段階で脱落をしているのである。結局デジタルサイネージのセールスは、愛と根性と浪花節の世界のままなのだ。本当にデジタルサイネージに愛があるのであれば、それに見合った仕組みや指標を一刻も早く確立する必要がある。
    AIでターゲットが絞り込めるようになり、5Gで膨大な拠点とのやり取りが高速で可能になることが目前に迫っているがゆえに、こうした動きはもはや待ったなしであり、地上波キー局がそうであるように、こういうテクノロジーを必要としないチャンピオンサイネージメディアの動きに引っ張られたままでは、業界全体の沈下は避けられない。(Y.E.)

  • 新たな時代の新たな観戦スタイル

    新たな時代の新たな観戦スタイル

    2019年9月20日開幕した「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」。そのタイミングをターゲットとして準備を進めてきたのがドコモの5Gの「プレサービス」である。トライアルではなく、プレサービスと銘打っているのは、2020年春に開始する5G(第5世代移動通信方式)商用サービスと同じネットワーク装置や同じ周波数帯を利用し、商用サービスとして付与された免許による28GHz帯の5Gを日本で初めて提供するからである。

    試合が行われるスタジアムには、5Gの基地局を設置し、複数の中継カメラによる高精細な試合映像を5G回線経由で会場内の5G端末にリアルタイム配信する。複数のアングルを2つの画面で同時に視聴できるようにするなど、新たな観戦スタイルを提案すると共に、ドコモの5G端末にカメラを接続することで、スタジアムで撮影した報道写真を5G回線で高速にアップロードできるようにしている。
    参考)(お知らせ)「ラグビーワールドカップ2019TM 日本大会」で5Gプレサービスを提供(docomo)
    筆者は、10月5日に東京スタジアムで行われたイングランド vs. アルゼンチン戦の試合前に、会場内のスペクテータープラザ内に設置されたドコモの5G体験ブースを訪れた。
    いくつかの体験コーナーが準備され、なかなかの混雑の中、「マルチアングル視聴」と「3Dアバター」を体験してきた。

    「マルチアングル視聴」は、ピッチ全体を見渡す客席からの視点だけではなく、レフリー目線やピッチ脇の低い視点からの映像を切り替えながら、解説などと共に、ラグビー観戦を楽しむ、というものである。
    「3Dアバター」は、5Gのプレサービスとは直接関係のない展示ではあったが、ユーザーとしてはなかなか楽しいものだったので、追記しておく。
    長い行列に並ぶ間に、「ポケットアバター」というアプリをダウンロードしたうえで、用意されている貸出用のラグビー日本代表のレプリカシャツに着替え、360度40台のカメラが配置された専用スキャナーの前に数秒間立って、全身の3Dスキャンをする。その画像がクラウド側でアバターとなり送られてくる。日本代表のシャツを纏った自分のアバターがトライを決める映像はかなり興奮した。詳細はこちらを参照いただきたい。
    その後、いよいよスタジアムでの観戦だったが、席は大きなフィールドを遠くから見下ろすような位置で、会場やピッチ全体を見渡すことができ、広い視野でワールドカップの雰囲気を楽しむことができた。しかし、実際のゲームでのスクラムやモールなど、プレイヤーが密集している様子は良く見えない。
    オペラグラスは持参していたものの、拡大には限界がある。もちろん、会場のスクリーンでもプレイヤーに寄った映像は時折見ることができるが、自分の見たいタイミングでないことも多い。客席用5G端末の貸し出しを受けていなかった筆者は、先に体験したマルチアングルでの映像がここで見られたら、と何度も思った。つまり、会場でライブ(含ライブビューイング)観戦しているときには実は詳細な情報が乏しい。そういう時にこそ、手元で自分のタイミングで見ることができるマルチアングル映像は真価を発揮する。
    テレビでのラグビーの観戦は、ケーブルで吊るしたスパイダーカムの登場で劇的に面白くなったと言われているが、今後はスパイダーカムも、マルチアングル映像も、AI解析エンジン等を活用した自動追尾システムと統合され、さらに進化していくことだろう。
    参考)【IBC2019】Vol.11 Nikonの子会社のPOLYMOTIONのAIカメラ制御システム(GASKET)
    やがて、オペラグラスや双眼鏡の代わりに5G対応のスマホ、というのが標準的なライブ観戦のスタイルになる、ということを感じさせられた日であった。(M.I.)

  • デジタルサイネージ
    NEWS解説

    デジタルサイネージ時代、プロジェクター高付加価値品ぞくぞく 記事元:newswitch 10月9日

    プロジェクター国内最大手のセイコーエプソンは9月、高輝度モデルとインタラクティブ機能搭載モデル、サイネージモデルの3種に分類したビジネスプロジェクター計8機種11モデルを発売した。サイネージモデルは3800ルーメンの明るさで、ショールームや店舗など販売促進用途での採用を見込む。プロジェクターは従来はオフィスでの一般的な業務での用途が主流だったが、市場は成熟化。より高付加価値の領域に今後も注目が集まりそうだ。

    数年前までは、よほどの高性能機種でない限り、プロジェクターで映像を流すのはインパクトが足りない感が否めなかった。
    しかし、である。いまや、プロジェクターの概念は大きく変わっている。家庭用の需要の伸びが市場の底を支えているのかもしれない。明るくて高画質になれば、プロジェクターという機器はなかなか使い勝手が良いものである。需要があるなら、短所をカバーすべく短焦点化しましょうとか、ちょっとぐらい斜めから投影してもゆがまないようにしましょうとか、ハードウエアというのはいくらでも進化していくものなのだなと、感心するばかりだ。
    筆者がこの業界の片隅に生息している理由はいろいろあるのだけれど、個別具体的な目標の1つが、「病院の講堂で入院や通院されている方達に臨場感のある動画を見てもらいたい」というものである。病院の講堂はものすごく多目的だし低予算なので、たいそうな設備は作れないし、場所も取りたくない。つねづね、プロジェクターのスペックが上がれば、そして市場価格が下がってくれば良いのになと思っていた。この記事に登場するような5万ルーメン(!)はオーバースペックだが、トップスペックが上がれば全体は底上げされる。用途のバラエティが出て市場が広がれば価格帯も下がる。ようやく高機能機種の低価格化のスピードが上がってきたような気がする。
    そろそろ具体的に考えても良いのではないか。となれば、コンテンツの腕の見せ所である。ハードの進化は、良質なコンテンツを出したい場所に出すことを可能にしてくれる。ハードメーカーの皆さんに感謝しつつ、企画を考えよう。(Y.K.)

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