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Vol.190

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  • イマーシブOOHの進化と未来 - テクノロジーが再定義する「街の広告体験」

    イマーシブOOHの進化と未来 -
    テクノロジーが再定義する「街の広告体験」

    テクノロジーの急速なコモディティ化により、デジタルサイネージを中心としたOOHメディアは、単なる「視認の場」から「体験の場」へと進化を遂げつつある。それを象徴するのが“イマーシブOOH”。五感に訴える演出により、ブランドとの偶然の出会いが記憶に残る体験へと変わっていく。

     

    「体験」がもたらす広告価値の変化

     「イマーシブ(Immersive)」とは“没入型”を意味する。OOHにこの概念を取り入れることで、サイネージは情報掲示を超えた価値を手に入れようとしている。視認・滞留時間の向上、ブランド想起率の強化、SNSシェアによる自然拡散、さらにQRコードや音声連動によるデータ取得が可能になることで、従来型OOHには難しかったエンゲージメント設計と効果測定の両立が実現しつつある。広告が「風景の一部」から「体験の起点」へと役割を変えているのだ。

     2023年、ルイ・ヴィトンはアーティスト草間彌生とのコラボレーションで、SNSのAR機能を活用したグローバルキャンペーンを展開した。エッフェル塔や自由の女神像、東京タワーなどのランドマークに水玉模様がリアルタイムで浮かび上がるAR体験を通じて、ブランドとアートの融合を世界中のユーザーに提供し大きな話題になった。

     
    https://hypebeast.com/2023/1/louis-vuitton-uses-ar-to-cover-landmarks-with-yayoi-kusamas-iconic-dotsより
     

    日本でも始まる「体験としてのOOH」

     こうした潮流は日本でも加速している。ジェイアール東日本企画は2025年、秋葉原駅構内に没入型空間「AKIBA WARP」を開設。32面LEDや柱・床・天井を活用し、駅を訪れる人々を異世界に誘う体験を提供している。

     
    https://www.jeki.co.jp/info/detail/?id=1352
     

     また、東急OOHでは2024年より「TOQ IMMERSIVE OOH」シリーズを展開。360度音響体験を提供する「TOQ IMMERSIVE OOH_SOUND」や、ショートドラマを電車内で放映する「_MOVIE」、ARテクノロジーを掛け合わせた「_AR」をなど、街における没入型メディアの開発が続く。2024年にはK-POPアーティストを起用した3Dサウンド型広告が渋谷駅や東急線で展開され高い反響を得た。

     
    https://www.tokyu-agc.co.jp/assets/img/page/news/2025/release20250325.pdf
    https://www.tokyu-agc.co.jp/assets/img/page/news/2024/release20241105.pdf
    https://www.tokyu-agc.co.jp/assets/img/page/news/2025/release20250410.pdf

     

    広告が「記憶」に残る時代へ

     イマーシブOOHの本質は、情報の押し付けではなく、五感を通じて“体験させる”ことで記憶と感情に残す点にある。さらに、スマホやSNSとの接続により、広告の効果測定や改善もリアルタイムで可能となる。差別化と話題性を兼ね備え、都市と広告、生活者とブランドの関係を再構築する。進行するマーケットプレイスの進化やメディアネットワークの拡大に加え、このような没入感を高めたイマーシブOOHが、広告コミュニケーションの新たな地平を切り拓くことを期待したい。

    (K.K.)

     
    従来のOOHとの比較

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